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船上パーティーは、一言でいえば『豪華絢爛』だった。
ゲストの中には、テレビニュースやスクリーンで見るような顔もチラチラと紛れている。
そこで提供される料理や酒は全て一流のもので、今回ばかりは格差なくゲストへ平等に振舞われるようだ。
(客観的に見ると、本当に我々はショボい一般人だな)
煌びやかなゲストたちを眺めながら、苦笑いを浮かべる聖であるが、そのゲストの何人かが聖を指して『あの佳人とどうにか親密になれないか』と浮足立っている事には気付いていないようだ。
そんな連中を横目に、晁生は手にしたグラスを見せつけるように掲げた。
「さあ、君の為に持って来たよ。乾杯しようじゃないか」
「ありがとう」
晁生の差し出したグラスを手に取り、聖はとびきりの笑顔を見せる。
そこら辺にいるモデルもどきとは一線を画す、生粋の美人が浮かべる微笑に「oh……」と、密かなざわめきが起こる。
悔しそうに睨んで来る視線を受けながら、晁生は少し優越感を覚えた。
(どうだ、この高嶺の花は美しいだろう? みんなボクが羨ましいかな)
しかし、残念だが得意の絶頂を味わう時間は、長くは続かなかった。
「やぁ、楽しんでいるか?」
その声に振り向くと、サイエン・ルドーが近付いて来るのが見えた。
堂々とした体躯と野性味漂う男振りだけで、この男は只者でないと誰もが思う。
まず、大抵の女は放ってはおかないだろう。
早速「ミスター、私の名前は――」「どこかでお会いしましたよね」と、接近を図る女達が現れるが、サイエンはそれらには歯牙も掛けず真っ直ぐ聖の前まで来た。
「さっきは済まなかったな。どうにも別れ難くて、ついついギリギリまで引き留めてしまった」
「……まったくだ。支度をする時間が殆ど無かったぞ」
「ハハ、そう怒るな」
サイエンは晁生を無視しながら、聖にだけ語り掛ける。
船上パーティーは、一言でいえば『豪華絢爛』だった。
ゲストの中には、テレビニュースやスクリーンで見るような顔もチラチラと紛れている。
そこで提供される料理や酒は全て一流のもので、今回ばかりは格差なくゲストへ平等に振舞われるようだ。
(客観的に見ると、本当に我々はショボい一般人だな)
煌びやかなゲストたちを眺めながら、苦笑いを浮かべる聖であるが、そのゲストの何人かが聖を指して『あの佳人とどうにか親密になれないか』と浮足立っている事には気付いていないようだ。
そんな連中を横目に、晁生は手にしたグラスを見せつけるように掲げた。
「さあ、君の為に持って来たよ。乾杯しようじゃないか」
「ありがとう」
晁生の差し出したグラスを手に取り、聖はとびきりの笑顔を見せる。
そこら辺にいるモデルもどきとは一線を画す、生粋の美人が浮かべる微笑に「oh……」と、密かなざわめきが起こる。
悔しそうに睨んで来る視線を受けながら、晁生は少し優越感を覚えた。
(どうだ、この高嶺の花は美しいだろう? みんなボクが羨ましいかな)
しかし、残念だが得意の絶頂を味わう時間は、長くは続かなかった。
「やぁ、楽しんでいるか?」
その声に振り向くと、サイエン・ルドーが近付いて来るのが見えた。
堂々とした体躯と野性味漂う男振りだけで、この男は只者でないと誰もが思う。
まず、大抵の女は放ってはおかないだろう。
早速「ミスター、私の名前は――」「どこかでお会いしましたよね」と、接近を図る女達が現れるが、サイエンはそれらには歯牙も掛けず真っ直ぐ聖の前まで来た。
「さっきは済まなかったな。どうにも別れ難くて、ついついギリギリまで引き留めてしまった」
「……まったくだ。支度をする時間が殆ど無かったぞ」
「ハハ、そう怒るな」
サイエンは晁生を無視しながら、聖にだけ語り掛ける。
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