9 / 75
1
1-5
しおりを挟む
「ぐふぅっ!」
「TPOをわきまえろ。こんな往来のある場所で長々と喋る内容じゃないだろう。それから晁生! 何を考えているか知らんが、余計な事はするんじゃねーよ」
凄んで見せたところ、どうやら聖の機嫌を損ねるのはマズいと思ったらしく、双方パッと手を離すと「それではまた」と軽く挨拶をして別れた。
そうしてサイエンがエレベーターに消えたのを確認すると、晁生は握手した手をポケットに入れて苦く笑う。
「おぉ、痛い。あの外人、とんでもない力で握って来たぞ。どうやら口ではあんな事を言っていたが、ボクを牽制する気満々だったようだ。男の嫉妬は怖いな」
「何だと? あいつ……」
ナモ公国では、その所為で手痛いしっぺ返しを喰らったというのに、まだ懲りないのか。
呆れたように嘆息したところ、晁生は「でも、それも仕方がないか」と呟く。
「君とは十年来の付き合いになるが、本当に君は昔と変わらず綺麗なままだ。それに、何と言ってもあっちも最高だ。誰だって、自分一人だけのモノにしたいと思うだろうね」
「買い被り過ぎだ。オレを幾つだと思ってるんだ?」
「ボクより一つ年上の、高嶺の花かな」
晁生はそう嘯くと、聖の方に腕を回した。
「それより、船内を一緒に回ってみないか? どうせ順番が来るまでヒマなんだから、それまでのんびりしよう」
「ヒマだと? やる事は結構あるぞ。秘書がいないんだから、資料制作も自分達でやらないと」
「真面目だな……君って、案外そういう性格だよね」
晁生はそう言うと、苦笑いを浮かべた。
◇
「う……んぅ」
鼻に抜けるような甘い吐息を漏らし、聖は頭を軽く振った。
乱れた髪が額に貼りつき、細かな汗が頬を伝う。
「TPOをわきまえろ。こんな往来のある場所で長々と喋る内容じゃないだろう。それから晁生! 何を考えているか知らんが、余計な事はするんじゃねーよ」
凄んで見せたところ、どうやら聖の機嫌を損ねるのはマズいと思ったらしく、双方パッと手を離すと「それではまた」と軽く挨拶をして別れた。
そうしてサイエンがエレベーターに消えたのを確認すると、晁生は握手した手をポケットに入れて苦く笑う。
「おぉ、痛い。あの外人、とんでもない力で握って来たぞ。どうやら口ではあんな事を言っていたが、ボクを牽制する気満々だったようだ。男の嫉妬は怖いな」
「何だと? あいつ……」
ナモ公国では、その所為で手痛いしっぺ返しを喰らったというのに、まだ懲りないのか。
呆れたように嘆息したところ、晁生は「でも、それも仕方がないか」と呟く。
「君とは十年来の付き合いになるが、本当に君は昔と変わらず綺麗なままだ。それに、何と言ってもあっちも最高だ。誰だって、自分一人だけのモノにしたいと思うだろうね」
「買い被り過ぎだ。オレを幾つだと思ってるんだ?」
「ボクより一つ年上の、高嶺の花かな」
晁生はそう嘯くと、聖の方に腕を回した。
「それより、船内を一緒に回ってみないか? どうせ順番が来るまでヒマなんだから、それまでのんびりしよう」
「ヒマだと? やる事は結構あるぞ。秘書がいないんだから、資料制作も自分達でやらないと」
「真面目だな……君って、案外そういう性格だよね」
晁生はそう言うと、苦笑いを浮かべた。
◇
「う……んぅ」
鼻に抜けるような甘い吐息を漏らし、聖は頭を軽く振った。
乱れた髪が額に貼りつき、細かな汗が頬を伝う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる