MAN OF THE FULL BLOOM

亜衣藍

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「ぐふぅっ!」

「TPOをわきまえろ。こんな往来のある場所で長々と喋る内容じゃないだろう。それから晁生! 何を考えているか知らんが、余計な事はするんじゃねーよ」

 凄んで見せたところ、どうやら聖の機嫌を損ねるのはマズいと思ったらしく、双方パッと手を離すと「それではまた」と軽く挨拶をして別れた。

 そうしてサイエンがエレベーターに消えたのを確認すると、晁生は握手した手をポケットに入れて苦く笑う。

「おぉ、痛い。あの外人、とんでもない力で握って来たぞ。どうやら口ではあんな事を言っていたが、ボクを牽制する気満々だったようだ。男の嫉妬は怖いな」

「何だと? あいつ……」

 ナモ公国では、その所為で手痛いしっぺ返しを喰らったというのに、まだ懲りないのか。
 呆れたように嘆息したところ、晁生は「でも、それも仕方がないか」と呟く。

「君とは十年来の付き合いになるが、本当に君は昔と変わらず綺麗なままだ。それに、何と言ってもも最高だ。誰だって、自分一人だけのモノにしたいと思うだろうね」

「買い被り過ぎだ。オレを幾つだと思ってるんだ?」
「ボクより一つ年上の、高嶺の花かな」

 晁生はそう嘯くと、聖の方に腕を回した。

「それより、船内を一緒に回ってみないか? どうせ順番が来るまでヒマなんだから、それまでのんびりしよう」

「ヒマだと? やる事は結構あるぞ。秘書がいないんだから、資料制作も自分達でやらないと」

「真面目だな……君って、案外そういう性格だよね」

 晁生はそう言うと、苦笑いを浮かべた。

   ◇

「う……んぅ」

 鼻に抜けるような甘い吐息を漏らし、聖は頭を軽く振った。
 乱れた髪が額に貼りつき、細かな汗が頬を伝う。
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