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最終章
最終章-8
しおりを挟む「それは、そうですが……でも」
「何度も謝るな。こっちの気分まで下がっちまう」
不愉快そうに言い捨てる須藤に、朝日はビクッと肩を揺らした。
そして、忘れていた過去をまた思い出す。
いつも無理やり笑顔を作って、涅槃の機嫌を必死になって取っていた。
――そんな、辛い思い出を。
「ご、ごめんなさい。もう言いません……」
「ん? おいおい……何でそんな悲しそうな顔をするんだ。俺がイジメたみたいじゃないか」
言いながら、今のは自分の言い方が悪かったと思い至り、須藤は困ったように眉根をキュッと寄せた。
「謝るのは、俺の方だ」
「え?」
「あの馬鹿野郎の所為で、散々な目に遭ったんだろう? 一時期、あの馬鹿が妙に羽振りがいい様子だったが、どうやらお前から金を毟り取っていたらしいじゃないか。縁を切ったとはいえ、一応あいつは俺の弟だ。弟が、迷惑を掛けてすまなかった」
「いえ、そんな! 須藤社長は全然関係ないですし」
「『関係ない』か……」
そこで言葉を切ると、次に、ジッと熱っぽい視線で朝日を見つめる。
「涅槃の凶行の所為で負傷者が病院に搬送されたと聞いた俺は、急いでその病院へ向かった。そこで俺は、病室で眠っているお前を一目見た瞬間に……心を奪われた」
「っ!?」
「そのあと、目覚めたお前にナイフで切り付けられた訳だが……でもその直後、お前はまた意識を失って倒れたんだ。そこからも色々あったが、どうやらお前は涅槃に関する全ての記憶を封印する事によって自我を保っていると。そう、医師から告げられた」
「そうだったんですか。あの、その辺りの記憶はまだあまり思い出してなくて――」
申し訳なさそうに項垂れる朝日に、須藤は少し慌てたように言葉を掛けた。
「いや、何も責めている訳じゃないんだ。ただ、そういう自衛の仕方もあるんだと、俺はそう感心したんだよ」
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