所沢朝日の恋愛譚は不完全すぎて

亜衣藍

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最終章

最終章-3

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 そうなのだ。

 まず、関係者全員が認識していた「光原家の祖母が片谷大佑を気に入った」という点であるが。

 実はここが大きな間違いで、元々は、街で偶然高校生の大佑を見かけた秋江が彼に一目惚れをしてしまい、それを祖母に打ち明けたところ、可愛い孫の為に私が一肌脱いでやろうと……そういう展開だったらしいのだ。

 たまたま片谷家の祖母と女学校が一緒だった事もあり、そのよしみで頼み易かった事もあるが。

 いずれにせよ、プライドの高い孫の為に、自分が上手く折れて両家の橋渡しをしようと光原の婆さんは動いたようだが、これがかえって混乱を招いてしまったのだ。

 お付き合いは、まず大佑が大学に進学してから改めて考えると言われ、これは遠回しに交際を断られたのだと。
 光原の婆さんはそう受け取り、悄然としながら秋江へ『脈は無い』と伝え。
 初めての恋が破れた事に自棄になった秋江は、大学の合コンで知り合った顔も名前もよく分からない男とワンナイトラブで妊娠してしまい、仕方がなくその男と結婚する事になった。

 両親の仲は、自分が物心ついた頃には既に冷え切っていたと……そうきよしは思っていたが、実は最初から冷え切っていた訳である。

 だが、秋江の最初の夫となったその男とは散々揉めた末にようやく離婚に至ったので、これでようやく大佑を婿に迎える事が可能となった。

 これまで多額の借金の肩代わりをしたこともあるし、大義名分はこちらにあると。

 光原家の婆さんは鼻息も荒く、今度こそ孫の為に頑張ろうと勢い込んで『昔の約束を覚えているわよね』と交渉に出た。

 そうして、今に至る訳だが。

 まず、ミツバこと大佑は、秋江は祖母同士の約束で仕方がなく自分と結婚したのだと思っていた。

 そんな相手に恋愛感情を持つなど、まず有り得ない。

 秋江の方も、大佑は祖母の命令で嫌々光原家に婿入りした事を知っていただけに、どうしても気後れしてしまい、あまりの申し訳無さからつい素っ気ない態度に出てしまった。

 大佑が外で何をしようとも口を出さなかったのはそれが起因していた。
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