所沢朝日の恋愛譚は不完全すぎて

亜衣藍

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 恋愛経験値が圧倒的に足りない今の朝日に、大佑と秋江の在り方を否定するだけの資格はない。
 これが、今まで、人と深く関わり合う事を避けて生きて来たツケなのだろうか?

(僕は須藤社長と恋人同士だと思っていたけど、それだって見る人によっては、少し仲が良いだけの社長と従業員でしかないのかもしれない)

 もしも朝日が、須藤との関係を『恋人』だと勘違いしていただけだったら、恭介に対して「須藤社長は僕の恋人だぞ!」と詰め寄るのはとんだお門違いになる。

 ただの、痛い男だ。

 第一、改めて思い返してみれば、『嫌いじゃなかったら付き合おうぜ』という須藤の強引な論法に押される形のまま、なし崩しになっているような気さえする。
 自分たちは、真剣な顔で「愛している」と、そんな言葉自体も互いに交わしていない。将来のことだって一言も口にしていない。

 朝日が恋愛を語るには、何もかもが不足している。

(このまま先もずっとおひとり様生活を送っていれば、いつか後悔するかもしれないって言われたけど)

 恋愛をサボってきた所為で、何が正しいのか全く分からないなんて!

「……すみません、光原社長。僕があれこれ言うのは見当違いでした。愛が無くても結婚する事は、もしかしたら普通なのかもしれませんね……」

 こんな自分が、人様に恋愛譚を語るなど、どの口が言えるというのだ。
 烏滸おこがましいにも程がある。

 悄然とした様子の朝日に戸惑いながら、光原は「まぁ、私と秋江さんの事はともかく」と前置きをした。

「私が須藤黒闇と出会ったのは、光原の家に婿養子に入ってすぐの頃だよ。急に色々な会社を任されて経済的には裕福にはなったが、如何せん鬱憤が溜まってね。ストレス発散に、新宿へ行った時に偶然彼と出会ったんだ」

 気になっていた須藤との馴れ初めを耳にし、朝日はパッと顔を上げた。

「やっぱり、光原社長はお金には困って無かったんですね。それじゃあなんで、僕が働いていた通販会社を急に手放したんですか?」

 須藤が乗り込んできた時の事を思い出し、朝日は詰め寄る。

「棚卸で一人だけ休日出勤していた時に、急にあの人達がやってきて僕は驚いたんですよ!?」
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