所沢朝日の恋愛譚は不完全すぎて

亜衣藍

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 その態度の違いは、朝日本人は気付いていないようだが、共に再採用された恭介には露骨なほど感じていた。

(須藤社長、もしかして朝日の事を……?)

 恭介がそう推測したタイミングで、だみ声を放ちながら「参りましたよ!」と、宇野という社員がドカドカと足音を鳴らして入室してきた。

「困りました、今月末開催予定のトクアン婚活パーティーの面子が集まらないっす。タチ希望は埋まってるんですが、ネコの方に欠員が出て。……どうします、社長? また誰か社員のサクラを入れますか?」

「ネコか。タチの方は絶対なのか? リバもNGか?」

「そうなんですよ。今回はハッキリ好みが分かれているんです。逆にそれでカップルが量産できそうなもんで、こっちも成婚料のソロバンを弾いてたんですが」

「ふん……何人足りないんだ?」

「五人っす。それが無理でも、せめて最低でもあと二人は用意しないと双方のバランスが取れないっす。だから、どうにかして開催したいんですが」

 元々の社員が多数を占める『結び相談所』であるので、ここでは朝日と恭介の二人が異分子になる。
 当然であるが、何かの隠語らしい『タチ』『ネコ』も、『トクアン』も、朝日はチンプンカンプンだ。

(婚活パーティーで、ネコってなんだろう? 愛猫家限定の婚活イベントってことで合っているのかな)

 朝日はチラリと恭介を見遣るが、恭介の方も言葉の意味を知らない様子で、困ったように肩を竦めてみせた。
 そんな二人に、宇野が「ああそうだ。こいつらが丁度いいじゃないですか」と、突然矛先を向けて来た。

「幸いな事に二人ともツラもいいし、おぼこい感じでネコ役にピッタリだ。そろそろ顔写真入りの案内も送付しないとマズいし、とりあえずそれで決めちまいましょう」

 だがこれに、須藤は難色を示した。

「しかし、まったくのノンケじゃあそれこそマズいだろう。参加者も出会いを期待しているんだ、サクラにしても素質が無いとクレームものだろう」
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