彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

文字の大きさ
18 / 131
4 Jealousy

4 Jealousy

しおりを挟む
「せっかく、零も契約している大手のモデル事務所を紹介したのに。あいつ、なんでそっちに行かないでジュピタープロに来たんだ!? 」

 ユウが怒るのも無理はない。

 零の旧知だと名乗ってユウに近付いてきたジンは、ジュピタープロダクション社長であり、ユウの父親でもある御堂聖のゴシップを握っていると脅すような事を言い、そのデータの交換条件を『自分とモデル契約するようジュピタープロと交渉しろ』と言ってきたのだ。
 
 ならば、モデル業界では新参者のジュピタープロダクションより、古くから幅を利かせて海外にも明るい大手モデル事務所の方が良いだろう。

 そちらを紹介したなら、当然、ジンはジュピターではなくそっちの事務所を選ぶと思って、わざわざ手を回したというのに。

「そのこともムカつくけど、オレをスルーして、ちゃっかりとジュピタープロダクションに入り込んだ事もムカつく! なんであんな奴、聖さんは採用したんだ!?」

 パソコンの画面に向かって不満をぶつけると、困惑したような声が返ってきた。

『う~ん。オレも、ジンとは子役モデルの時に何回か一緒の仕事をしただけで、あまり話すような親しい仲じゃなかったから分かりませんが……でも、ユウさんから聞いた人物像と、オレの知っているジンは随分と印象が違いますね』

「え? そうなのか?」

『はい。モデルは、本人と言うよりも母親の方が熱心で』

「ステージママってヤツか?」

『そうです。ジンは、モデルなんて嫌だ、パパと遊びたいのにってボヤいてました。でも、そんな仕草も可愛いと大人たちは皆メロメロでしたね』

「可愛い? あれが?」

『はい。子役モデルの頃のジンは、フワフワの栗色の髪をした、ふっくらリンゴほっぺの可愛い天使のような子でしたよ』

「……」

 それは、本当に竹野仁なのか?

 いや、零が言っているのはあくまで子役モデル・・・・・だった頃の話だ。

 人は時が経ては、誰でも変わる。

「――まぁ、わざわざお前に口利きしてもらったのに、無駄になって悪かったよ」

 リモートにもかかわらず、ぺこりと律儀に頭を下げるユウへ、零は『とんでもない』と答えた。

『オレに出来る事なら何でも協力するので、遠慮なくどんどん言ってください。本当は、こんな形じゃなくて直接ユウさんの近くに行って、フォローしたかったんですが……』

 画面越しに悄然と肩を落とす恋人へ、ユウはくすっと笑いながら語り掛ける。

「仕事が順調な証拠だから、それは仕方がないさ。それより、オーストラリアでの撮影はどうだ?」

『ええ、今のところは大きなトラブルも無くて、まずまずといった感じですね。でも、今日は天気がイマイチ悪くて――撮影が一日伸びそうです。さっさと終えて、早く日本に帰国したいのに』

「そんなに、オレに会いたいのか?」

『もちろんですよ! オレは毎日でも、ユウさんと一緒にいたいんですから』

 悔しそうな顔をする零からは、嘘は感じられない。

 そう、あの竹野たけのジンから感じ取ったような、の気配は。

(もう、オレが口を出すような話じゃなくなったけど……聖さん、本当に大丈夫かな?)

 あんなヤツに惚れるわけがないと、自信たっぷりに振舞っていた聖を思い出し、ユウは小さな溜め息をつく。

(あの人は、自分の事をよく分かってないからな……)

   ◇

 その三日後、予定通り赤坂の料亭での会食を終え、ゲストを見送った聖は、最後に店側が手配したハイヤーへと乗り込もうとしていた。

 すると、

「おい!」

「?」

 鋭い声に振り向くと、店員を押しのけて、物騒な雰囲気の男たちが近寄って来るところだった。

 それを見て、聖は舌打ちをする。

 事情を知っている真壁は別件での仕事があり、今夜は席を外している。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

十六夜の月

むらさきおいも
BL
あらすじ 家出を余儀なくされた斗亜は昔の知り合いを尋ねて一人、あるアパートへ向かった。 しかし、その部屋に住んでいた住人は斗亜が頼りたかった人とは似ても似つかぬ別人だった!? 偶然の出会いから、闇の世界へどっぷりと足を突っ込んでしまう事になる斗亜と、そんな世界に引き込みたくないと思いながらも想いを寄せてしまう龍士。 二人の恋の行方と神原組の物語を是非楽しんだくださいませ♡

処理中です...