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真壁了、犬の生活🐕
真壁了、忠犬の日常🐕
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聖はショックだったようだが、真壁が『仔犬達も本当の飼い主に会えて喜んでいたようです』という言葉を聞いて諦めたようだ。
「あの子達が、やたらとケンカをしていた原因は……もしかしたら、飼い主とはぐれた不安から来るストレスだったのかもな……オレに懐いてくれているかと思っていたが、どうやら自惚れだったようだ」
切ない声に、つい“じつは、このオレがその仔犬です!”と言いそうになったが、そこはグッと堪えた真壁であった。
🐕
「社長、夜の予定は先方の都合でキャンセルが入りました。あとの仕事は、社長自らが顔を出す程重要なものではありません。早川と井上の役員二人が出れば十分でしょう。こちらで調整しておきました」
「――そうか」
「社長はお疲れのようですし、今日はこのままお帰りになってください。車を回します」
返事を待たず席を立つ真壁であるが、チラリと聖の様子を確認したところ、彼は本当に疲れているのか、物憂げに瞼を閉じて俯いていた。
(聖さん……本当の事を言えず、すみません)
しかしまさか、腹を撫でられて喜んでいたあの犬が自分ですとは言えない。
グッと堪えながら、真壁は社長室を退室した。
――――真壁は、社長秘書の他にも、社長専属の運転手も兼任している。
先日、聖の無茶な運転のせいでボロボロになってしまったジャガーはまだ帰って来ていないので、代車のミニへ聖を乗車させたところで車を発進させた。
チラリと、バックミラー越しに主人の様子を垣間見たところ、潤んだ瞳で車外を見ているその様子に、心がキュンと痛む。
(早く、立ち直ってください。聖さん……)
その為だったら、自分は何でもやる。本当に、何でもやってやる。
しかし、ここまで落ち込んでいる聖に何と声を掛けたらいいものか分からない。
そうしているうちに、車は聖のマンションへ到着した。
そこで、真壁は意を決して口を開いた。
「あの子達が、やたらとケンカをしていた原因は……もしかしたら、飼い主とはぐれた不安から来るストレスだったのかもな……オレに懐いてくれているかと思っていたが、どうやら自惚れだったようだ」
切ない声に、つい“じつは、このオレがその仔犬です!”と言いそうになったが、そこはグッと堪えた真壁であった。
🐕
「社長、夜の予定は先方の都合でキャンセルが入りました。あとの仕事は、社長自らが顔を出す程重要なものではありません。早川と井上の役員二人が出れば十分でしょう。こちらで調整しておきました」
「――そうか」
「社長はお疲れのようですし、今日はこのままお帰りになってください。車を回します」
返事を待たず席を立つ真壁であるが、チラリと聖の様子を確認したところ、彼は本当に疲れているのか、物憂げに瞼を閉じて俯いていた。
(聖さん……本当の事を言えず、すみません)
しかしまさか、腹を撫でられて喜んでいたあの犬が自分ですとは言えない。
グッと堪えながら、真壁は社長室を退室した。
――――真壁は、社長秘書の他にも、社長専属の運転手も兼任している。
先日、聖の無茶な運転のせいでボロボロになってしまったジャガーはまだ帰って来ていないので、代車のミニへ聖を乗車させたところで車を発進させた。
チラリと、バックミラー越しに主人の様子を垣間見たところ、潤んだ瞳で車外を見ているその様子に、心がキュンと痛む。
(早く、立ち直ってください。聖さん……)
その為だったら、自分は何でもやる。本当に、何でもやってやる。
しかし、ここまで落ち込んでいる聖に何と声を掛けたらいいものか分からない。
そうしているうちに、車は聖のマンションへ到着した。
そこで、真壁は意を決して口を開いた。
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