彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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真壁了、犬の生活🐕

真壁了、昇天する🐕

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 だが、ケンカを仲裁しようと動き掛けた聖へ、不意に扉の外から声が掛けられた。

「すみませーん、家具引き取りのサインだけ貰いたいんですが」

「? いつもは、不用品回収は――」

「ちょっと手続きが変更になったので」

 そう言われては、サインしないワケには行かない。

 清掃員の声と違うとか、コンシェルジュから説明はなかったとか。

 色々不審な点はあったのだが、目の前にいる仔犬達に全意識を集中させていた聖は深く考えずに「わかった」と返答し、脱いでいたズボンを履く。

「いいかお前達、ケンカをしちゃあダメだぞ? いい子にしてろよ」

「グルルル」

「ヴゥ~」

「そのまま、待てよ?」

 仔犬達にそう言いながら、聖は扉を開く。

「それじゃあ、サイ――!」

 すると、マスクで顔を隠した屈強な男二人が突如押し入り、聖に襲い掛かった!

「っ!」

 本当に不意打ちだった。

 顔を布で覆われ、取り押さえられた状態で首筋に簡易注射を打たれた聖は、抵抗する間もなくその場にくずおれる。

 芸能プロダクションの敏腕社長として、国内外あちこちのトップと濃厚な付き合いのある聖には何かと敵が多く、その命と肉体を狙っている者も多い。

 この男たちは、そのどこかの組織から派遣された実行部隊だった。

「よし、このままスーツケースに入れて運ぶぞ」

「用心深い男だと聞いていたが、案外楽な仕事だったな」

 二人はそう声を交わすと、聖の身体を持ち上げて大型スーツケースへ入れようとする。

 その足へ、二匹の仔犬達が猛然と咬み付いた。

「痛っ!」

「なんだよ、こんな犬飼ってたのか?」

 男たちは苛立ちながら、ブンと足を振り上げる。

 その勢いに、ボクサー犬とポメラニアンは振り落とされた。
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