彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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真壁了、犬の生活🐕

真壁了、悶える🐕

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 すると、温いお湯を浴びたポメラニアンは、フワモコだった毛が途端にぺたんとした。

 その様を見て、聖は声を上げて笑う。

「ははは、面白いなぁお前。濡れると、一回り小さく見えるぞ。まるで別の犬みたいだ」

「キャン」

「よぉし、それじゃあお腹も洗うから、大人しくいい子にするんだぞ?」

「キャ~ン💗」

 聖の言葉が分かるように可愛い声で鳴く仔犬に、聖は蕩けるような笑顔を浮かべながら優しく腹部を撫でるが――――次に、凍り付くような事を言った。

「何だ、お前も男の子か?」

「クン」

「すっごい小さいな~豆粒みたいだ。マジでベイビーちゃんだな」

「っ!!」

 ガーンとショックを受けて硬直する一夏を横目に、真壁は溜飲が下がる思いでニヤリと笑っていた。

   🐕

 シャンプーを終え、清潔なタオルで身体を拭いて乾燥させると、モコモコだった毛並みは復活し益々フッワフワになった。ボクサー犬の方も肌触りのいい毛布のような触感になり、幾らでもナデナデと撫でていられる。

「う~ん、やっぱりお前達、とびきり可愛いなぁ」

「ワンッ」

「……キュン」

「ん? 何だなんだ? 毛玉犬の方は元気がないな? どうしたんだ?」

 心配そうになる聖を見て、真壁はプッと吹き出す。

『あはは、大丈夫ですよ聖さん! この若造、聖さんに豆粒と評されて意気消沈しているだけですから』

『うるせーよ! これはな、今は犬の格好のせいだ!! 人間の時のオレは、聖に突っ込んでアンアン鳴かせることが出来たんだからなっ』

 この衝撃告白に、真壁の眼がギラリと光った。

『噓をつくな、この若造が!』

『嘘じゃねーよ!! 何だぁ? さてはオッサン、あんたはこんな旨そうなエサを目の前にしておきながら、一度もこいつに手を出したことがないのか?』

 この揶揄に、真壁は『グッ……』と言葉を呑み込んだ。

 その通り、真壁は一夏よりもずっと付き合いは長いが――何かしらのハプニングがない限り、キスだけしか……聖とはしたことがない。

(この若造、調子に乗ってなんて下品な事を! しかしここで、アンアン鳴かせたという言葉の真偽を問い質すのも大人気ないか?)

 真壁にも、矜持プライドというモノがある。

 咳払いをしつつ、真壁は一夏の挑発を遣り過ごそうと、言葉を選んだ。

『ひ、聖さんはとても気高く美しい人だから、簡単に汚していいような方ではない。だからオレは、この清い関係をとても大切にしているわけで――』

『ケッ! ようするにチキンってことじゃねーか』

『なんだと! 言わせておけばっ!!』

 生意気な一夏の態度に、真壁はカッとした。

 こうして再び、仔犬達の間には一触即発の緊迫した空気が張り詰めるが。

 それを察した聖が、素早くその間に入った。

「はいはい、ケンカしちゃあダメだぞっ!」

「ヴゥ~」

「グルルルル」

「こらっ! ケンカする悪い子は、本当に青菱のオジサンの子にするぞ」

「っ!」

「!!」



 覿面、仔犬達の戦意は喪失した。

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