彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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 すると、いま口を開いたとは別の幹部が、ここぞとばかりに身を乗り出した。

「わたしもオジキと同感ですよ。姐さんは実家に戻り、坊ちゃんも外国送りとなったら、この青菱内部はどうなっているんだと他所からも訝しがられるでしょう。もしもそれが青菱の内紛だと思われたら、それこそ、攻撃する絶好の機会だと思われ兼ねない」

「ふ……ん?」

「オレからも、言わしてください」

 今度は、顔に傷のある、一番端に陣取っていた幹部が割り込んできた。

「僭越ですが、意見させてもらいやす。ここのところずっと青菱の調子がいいもんで、外の連中からだいぶねたまれて、恨みを買っているような状況です。このご時世、ヤクザも廃業するのが多い中、うちらは上手い事トントンでやらせてもらってますからな」

「会長!! あっしも同意見です。今は、中を固めて一致団結するのが上策っすよ! 一夏坊ちゃんは外国に留学させるより、国内でもっと研鑽を積ませて立派な男に育てる方が良いっす!」

「――――どうか、会長。もう一度よく考えてくださいませんかね」

 普段は、反目しあっている幹部たちが、奇跡的に一致団結している。

 史郎は意外な光景を前に、不思議な物でも見るような面持ちで腕を組んだ。

(こいつらが、こんなに青菱の事を考えているとは思わなかったな。オレのバカ息子のことも、どうせボンボンで世間知らずのクソガキくらいにしか考えていないだろうと思ってたが)

 だが――――一夏の世話役として、長い事守役をして面倒を見ていた山藤ならばともかく、まさかこの4人の幹部までが一夏擁護に回るとは。

……実に、意外だ。

 それは、唯一、御堂聖と身体の関係の無い・・幹部こと山藤も同じだった。

 なにがなんでも、身を挺してでも一夏を庇おうと意気込んで、青菱の幹部の1人としてこの会合へ顔を出したが。

 蓋を開けてみれば、山藤が擁護するまでもなく、他の4人の幹部が一夏擁護に徹している。

 これには、いかな暴君と呼ばれる史郎とは言えど、そうそう聞かぬふりはできないだろう。

 チッと舌打ちをすると、史郎は苦々し気に口を開いた。
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