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Poisonous flower
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「う――」
『淫売』というお決まりの罵倒が続かない。
この、綺麗な天女のように美麗な男に対して使うには、その罵り文句はあまりに稚拙すぎる。
腕の中の生き物は、神秘的なほどに妖しく芳しい美獣だ。
人の心を喰らう淫蕩な妖魔だ。
傾国の美女……そう囁かれている二つ名は、確かに本物だったと一夏も認めるしかない。
魅入られてしまった男には、もう、逃れることも抗う事もできない。
ただただ、その身体にむしゃぶりついて欲望のエキスを注ぎ込みたくなる。
オスの、本能で!!
「くそっ!」
小さく舌打ちをすると、一夏は腕の位置を変えて、聖を両腕に抱え上げていた。
驚いた様子で、聖は一夏を見遣る。
「な、何を――」
「あんたには、抵抗する権利はないと言ったはずだ!」
一夏はそう告げると、履いていたジーパンを器用に靴ごと足から抜き取りながら、コネクティングルームへ歩を進める。
そこには、キングサイズのベッドが鎮座していた。
この屋敷は隠れ家として、一軒丸々一夏が己のアジトとして使用している。
いつもならば、気心の知れた仲間や女たちを連れ込んで屯するところであるが――――。
一夏は壁に取り付けてあるインターフォンを肩で押して作動させると、別室で待機しているであろう仲間達へと「今夜は解散だ。全員、ここから出て行け」と命じた。
この場では、一夏が王だ。
王の命令が下った以上、男たちは不承不承でも従うしかない。
「一夏……」
戸惑いながら、聖は見上げる。
「お前……もしかして、オレを抱きたいのか?」
聖の問い掛けに、一夏は「今更か」と苦笑した。
そうして、少しだけ余裕を取り戻しながら、一夏は聖の身体をベッドの上へと横たえる。
先の場で、聖に口を遣わせて、その顔面に思うさま顔射して屈辱感を味わわせるのも一興だったが。
しかし、今は――――もっと真剣に、深く激しくこの男を抱きたいと思う。
そうでなければ、御堂聖という人間が理解できないような気がする。
…………いや、それはきっと下らない建前だろう。
多分、自分は、もっとずっと前から――――
「オレは、あんたの事が……」
だが、その唇は塞がれた。
「頼むから……オレを愛しているなら、愛しているなんて言わないでくれ」
それが、今の聖の願いだったから。
恋を失ったばかりの聖の心は、本人が思っている以上にダメージを負っていた。
――――今はただ、この傷を誰かに癒して欲しい。
痛みを伴ってもいい。
いっときでも、失った恋を忘れさせてほしい。
二人はそのままベッドへ倒れ込むように重なると、時を惜しむように激しく求めあった。
一夏は純粋に欲望を滾らせるままに。
聖は、寂しい心を埋めるように。
互いに、この先がどうなるかなど考えもせずに、限界まで抱き合ったのだった。
END
これにて完了です☆
番外編として、この作品とは別に分けて「後日談」などを執筆する予定なので、気になる方はチェックしてみてくださいね😄
それでは、お疲れ様でした🥂
※追伸
後日談more連載開始しました。
チェックよろしくです。
『淫売』というお決まりの罵倒が続かない。
この、綺麗な天女のように美麗な男に対して使うには、その罵り文句はあまりに稚拙すぎる。
腕の中の生き物は、神秘的なほどに妖しく芳しい美獣だ。
人の心を喰らう淫蕩な妖魔だ。
傾国の美女……そう囁かれている二つ名は、確かに本物だったと一夏も認めるしかない。
魅入られてしまった男には、もう、逃れることも抗う事もできない。
ただただ、その身体にむしゃぶりついて欲望のエキスを注ぎ込みたくなる。
オスの、本能で!!
「くそっ!」
小さく舌打ちをすると、一夏は腕の位置を変えて、聖を両腕に抱え上げていた。
驚いた様子で、聖は一夏を見遣る。
「な、何を――」
「あんたには、抵抗する権利はないと言ったはずだ!」
一夏はそう告げると、履いていたジーパンを器用に靴ごと足から抜き取りながら、コネクティングルームへ歩を進める。
そこには、キングサイズのベッドが鎮座していた。
この屋敷は隠れ家として、一軒丸々一夏が己のアジトとして使用している。
いつもならば、気心の知れた仲間や女たちを連れ込んで屯するところであるが――――。
一夏は壁に取り付けてあるインターフォンを肩で押して作動させると、別室で待機しているであろう仲間達へと「今夜は解散だ。全員、ここから出て行け」と命じた。
この場では、一夏が王だ。
王の命令が下った以上、男たちは不承不承でも従うしかない。
「一夏……」
戸惑いながら、聖は見上げる。
「お前……もしかして、オレを抱きたいのか?」
聖の問い掛けに、一夏は「今更か」と苦笑した。
そうして、少しだけ余裕を取り戻しながら、一夏は聖の身体をベッドの上へと横たえる。
先の場で、聖に口を遣わせて、その顔面に思うさま顔射して屈辱感を味わわせるのも一興だったが。
しかし、今は――――もっと真剣に、深く激しくこの男を抱きたいと思う。
そうでなければ、御堂聖という人間が理解できないような気がする。
…………いや、それはきっと下らない建前だろう。
多分、自分は、もっとずっと前から――――
「オレは、あんたの事が……」
だが、その唇は塞がれた。
「頼むから……オレを愛しているなら、愛しているなんて言わないでくれ」
それが、今の聖の願いだったから。
恋を失ったばかりの聖の心は、本人が思っている以上にダメージを負っていた。
――――今はただ、この傷を誰かに癒して欲しい。
痛みを伴ってもいい。
いっときでも、失った恋を忘れさせてほしい。
二人はそのままベッドへ倒れ込むように重なると、時を惜しむように激しく求めあった。
一夏は純粋に欲望を滾らせるままに。
聖は、寂しい心を埋めるように。
互いに、この先がどうなるかなど考えもせずに、限界まで抱き合ったのだった。
END
これにて完了です☆
番外編として、この作品とは別に分けて「後日談」などを執筆する予定なので、気になる方はチェックしてみてくださいね😄
それでは、お疲れ様でした🥂
※追伸
後日談more連載開始しました。
チェックよろしくです。
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