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Good-bye, days dear
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「立ちんぼだぁ?」
ムッとして睨むと、碇はあっさりと頷いた。
「ああ。ずっとそうしていれば、絶対に勘違いした野郎が声を掛けてくると思うぞ」
碇はそう言うと、後ろについていた男たちへ『先に戻っていろ』と手を振って解散させた。
その様子を不満気に見遣りながら、聖は溜め息をつく。
今やジュピタープロダクションと言えば、国内ではそこそこ名の通ったまっとうな芸能事務所としての地位を築いている。
我ながら、そりゃあ立派なもんだと思う。
その社長である筈の御堂聖だが、ジュピタープロの看板を知らないものから見れば、街角に立つ姿はコールボーイのような印象を受けかねないという事か。
(まぁ、やってる事は大差ないかもしれないが)
事務所の海外進出も視野に入れて、積極的に売り込んでいる身だ。
海外の大物プロデューサーは、俳優に手を出した末に訴えられて失脚するような心配もないので、『社長』の聖には喜んで手を出して来る。
そのあとは、こっちも得意の手練手管で相手を陥落させて、サインを捥ぎ取るだけだ。
実際そうやって、どんどんツテを拡大している途上である。
ジュピタープロダクションは、多くの役者を抱えているのだ。
彼ら彼女らの為にも、その受け皿は多く広い程良い。
「……無理してんじゃないのか?」
不意に話し掛けられて、聖はハッと顔を上げた。
「なに?」
「ナモ公国でも、お前には資金洗浄の口座を開設する手伝をしてもらった。こっちの都合で、余計な苦労まで掛けたからな。……これでも、気にしてたんだぜ」
(※詳しくは『キラワレモノ』をご覧ください)
それを聞き、聖はチッと舌打ちをすると、咥えていたタバコを足元へ落としギュッと踏みつけた。
「ゴリラのクセに、らしくねぇこと言ってんじゃねーよ。テメーは今や天黄組の頭だ。ドンと構えて威張ってりゃあいいのさ」
要するに『気にするな』と言いたいらしい。
その聖流の言い回しに、碇は苦笑を浮かべた。
「そうか……。もしも予定がなけりゃあ、どうだ? 一杯付き合わないか?」
「そうだな――」
独りは寂しい。
旧知の仲の男と一杯引っ掛けるのも、良い気晴らしになるかもしれない。
そう思い、「いいぜ」と口を開きかけた時、ポケットから振動が伝わった。
サッとその画面に目を通し、聖は舌打ちをする。
「――生憎、急用が入っちまった。じゃあな」
そう言うと、後はもう碇の顔も見ずに、手を上げてタクシーを止めていた。
「おい……」
「悪いな」
もの言いたげな様子の碇を無視しながら、聖は運転手へ行き先を告げた。
◇
「ミドー、例のドラマの話に横やりが入った」
「――どういうことだ、ダグ? 映画はダメだったが、ドラマならOKだって契約書を交わすまで行ったはずじゃなかったのか?」
いつも、密会用に利用しているホテルの一室で、海外事業のプロモーターとして聖の為に尽力していたダグラス・バーグマンは、力なく肩を落として謝罪した。
「すまない。違約金は出すそうだ」
「そういう話じゃない! これは、ウチの俳優が世界に顔を売る絶好のチャンスだったんだ。それを、今更全部ご破算にしろってのか?」
怒りに顔を染める聖に、ダグラスは苦し気に言葉を紡ぐ。
「中国資本が、また乗り出してきたんだ。ドラマの制作費も10%上乗せで出資すると言い出したらしい」
「なんだって!?」
「君の会社には当然違約金は出すし――それとは別に、領収書のない心付けも用意するそうだ。君にこんな報告をしなければならないなんて、本当は私も悔しいんだ……」
そう言うと、ダグラスは力なく肩を落とした。
ムッとして睨むと、碇はあっさりと頷いた。
「ああ。ずっとそうしていれば、絶対に勘違いした野郎が声を掛けてくると思うぞ」
碇はそう言うと、後ろについていた男たちへ『先に戻っていろ』と手を振って解散させた。
その様子を不満気に見遣りながら、聖は溜め息をつく。
今やジュピタープロダクションと言えば、国内ではそこそこ名の通ったまっとうな芸能事務所としての地位を築いている。
我ながら、そりゃあ立派なもんだと思う。
その社長である筈の御堂聖だが、ジュピタープロの看板を知らないものから見れば、街角に立つ姿はコールボーイのような印象を受けかねないという事か。
(まぁ、やってる事は大差ないかもしれないが)
事務所の海外進出も視野に入れて、積極的に売り込んでいる身だ。
海外の大物プロデューサーは、俳優に手を出した末に訴えられて失脚するような心配もないので、『社長』の聖には喜んで手を出して来る。
そのあとは、こっちも得意の手練手管で相手を陥落させて、サインを捥ぎ取るだけだ。
実際そうやって、どんどんツテを拡大している途上である。
ジュピタープロダクションは、多くの役者を抱えているのだ。
彼ら彼女らの為にも、その受け皿は多く広い程良い。
「……無理してんじゃないのか?」
不意に話し掛けられて、聖はハッと顔を上げた。
「なに?」
「ナモ公国でも、お前には資金洗浄の口座を開設する手伝をしてもらった。こっちの都合で、余計な苦労まで掛けたからな。……これでも、気にしてたんだぜ」
(※詳しくは『キラワレモノ』をご覧ください)
それを聞き、聖はチッと舌打ちをすると、咥えていたタバコを足元へ落としギュッと踏みつけた。
「ゴリラのクセに、らしくねぇこと言ってんじゃねーよ。テメーは今や天黄組の頭だ。ドンと構えて威張ってりゃあいいのさ」
要するに『気にするな』と言いたいらしい。
その聖流の言い回しに、碇は苦笑を浮かべた。
「そうか……。もしも予定がなけりゃあ、どうだ? 一杯付き合わないか?」
「そうだな――」
独りは寂しい。
旧知の仲の男と一杯引っ掛けるのも、良い気晴らしになるかもしれない。
そう思い、「いいぜ」と口を開きかけた時、ポケットから振動が伝わった。
サッとその画面に目を通し、聖は舌打ちをする。
「――生憎、急用が入っちまった。じゃあな」
そう言うと、後はもう碇の顔も見ずに、手を上げてタクシーを止めていた。
「おい……」
「悪いな」
もの言いたげな様子の碇を無視しながら、聖は運転手へ行き先を告げた。
◇
「ミドー、例のドラマの話に横やりが入った」
「――どういうことだ、ダグ? 映画はダメだったが、ドラマならOKだって契約書を交わすまで行ったはずじゃなかったのか?」
いつも、密会用に利用しているホテルの一室で、海外事業のプロモーターとして聖の為に尽力していたダグラス・バーグマンは、力なく肩を落として謝罪した。
「すまない。違約金は出すそうだ」
「そういう話じゃない! これは、ウチの俳優が世界に顔を売る絶好のチャンスだったんだ。それを、今更全部ご破算にしろってのか?」
怒りに顔を染める聖に、ダグラスは苦し気に言葉を紡ぐ。
「中国資本が、また乗り出してきたんだ。ドラマの制作費も10%上乗せで出資すると言い出したらしい」
「なんだって!?」
「君の会社には当然違約金は出すし――それとは別に、領収書のない心付けも用意するそうだ。君にこんな報告をしなければならないなんて、本当は私も悔しいんだ……」
そう言うと、ダグラスは力なく肩を落とした。
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