彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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Darkening

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「……勘違いするな。ソイツは退屈しのぎに遊んでいただけのガキさ。でもセックスが下手くそでな――――そろそろお役御免にしようと思ってたんだよ」

 冷たい聖の声に、男は胡乱気な眼差しを向けるが……次に、その視線を誉へ向けた。

「――だ、そうだ。こいつはこれから用があって忙しい。ガキはさっさと家に帰れ」

「な、なんだと――」

 誉は、反論しようとした。

 自分は聖を愛している。こんなことで、あっさりと諦めたくはない。

 だが――目の前に立ちはだかる男から受けるプレッシャーは、並大抵なものではない。

 男から視線を逸らさず睨み返すだけで、冷や汗が流れて来る。

(くそっ!)

  獰猛な肉食獣のような男と対峙するだけで、激しく神経を消耗する。

 しかし、負けたくない!

「あんたこそ、出て行け!」

「ん?」

「あ、あんたのようなヤツこそ、その人の傍に居ちゃあダメな人種だろう! 警察呼ぶぞ!ここを出て行けよ、オッサン!!」

「警察だぁ?」

 男は愉快そうに笑うと、聖から手を離し、グイッと身体を前進させた。

 それだけで、誉は無意識に後退する。

 大声で「出て行け」と言いたいのに、舌が凍り付いたように動かなくなる。

「あ、あ……」

「呼びたきゃよべ。でも、お前は二度と表が歩けないようなツラになるだろうがな」

 これに、男は洒落のつもりなのか一言付け加える。

「それとも、別の場所を潰した方がいいか? あれだ、二度と浮気が出来ないようにな」

 目に見えて青ざめる誉に、男は笑顔を引っ込めると、牙をむいた獣のように低く言い放つ。

「こいつは、オレのモノだ」

「う……」

 今すぐに、逃げ出したい。だが誉は、聖への執着から何とか踏み止まろうと頑張る。

「い――いやだ。オレは、オレは……」

 だが、男はそんな誉の懊悩を無視するかのように、ソファーから動けずにいた聖へと覆い被さった。 

 そうして、背中越しに視線を投げて誉を嘲笑する。

「おい、ガキ――――お前じゃあ力不足だとよ」

「なっ!」

「こいつは、こうやるんだよ」

 言うが否や、男は乱暴に聖のバスローブを剥ぎ取った。

 眩しいくらいの白い肌が露わになると、男は間髪入れずに、その両脚の間へと腰を潜り込ませる。

 聖の、くぐもった声が漏れた。

「うぅっ……!」

「――ん? おいおい、トロトロじゃねーか。自分で準備してたってのか?」

「あん、た・に……合わせたんだ、よ……」

 苦し気に顔を歪ませながらも、ようよう言葉を繋ぐ聖に、男は満足したように笑む。

「可愛いこと言ってくれるな」

 同時に、一気に腰を突き上げる!

「――!」

 聖の喉が仰け反り、汗が宙に舞った。

 白い脚が跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。

「あ――あっ!」

「……相変わらず、孔は最高だな。気を抜くと一気に持ってかれるぜ」

「――ゆ、ゆっくり……し・ろ……」

 途切れとぎれの言葉を無視して、男は聖の両脚を抱えたまま立ち上がった。

「――!」

 声にならない聖の悲鳴が上がる。

 爪を立てて己の首に縋り付く、その芳しい身体を前後に揺さぶりながら、男は誉を振り向いた。

「ガキ! よく見ておけ!」

「っ!?」

「お前じゃあ、こいつを満足させるなんざ百年経っても無理だってな! どうだ!? こいつのイイ顔が見えるか?」
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