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最終章

最終章-2

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 あいにく、二人の間に子を儲ける事は叶わず、望んだ結果は得られなかったが。

「私達は……不器用な男だな……」

 愛しても恋しても、幸せになれそうで成れなかった。

 後悔ばかりを繰り返し、たとえ満足しても、すぐにそれは通り過ぎる。

「『自分の生きる人生を愛せ。自分の愛する人生を生きろ』」

 九条はそう呟くと、次に顔を上げて微笑んだ。

「ボブ・マーリーのこの言葉を、胸に刻んでもらいたい。私も、君達以上に後悔ばかりの人生だったが、それでも満足はしているよ。だって、七海達樹という唯一無二の、私だけのオメガと出逢えたのだから。君達はこれからどんな人生を歩むのか分からないが、それでもきっと今回の事を思い出す度に、こう実感するよう願うよ」

 正嘉と栄太を見遣りながら、九条は謳うように言う。



「まことに、思い出深い好い人生だった、と」



「――――そう、思える日が来るだろうか」

 初めて聞く、心細げな正嘉の声に、九条は微笑みを返す。

「君は、まだまだ若いね」

「……」

「絶望するには、早過ぎる。人生はずっと長いよ」

 そう言うと、九条は二人を応接間へ通し、それぞれソファーへ掛けるよう促した後に部屋を出て行った。

   ◇

 九条の案内で静かに現れた奏は、とても穏やかな表情を浮かべていた。

 オメガとして幾度も虐げられ散々辛酸を嘗めた彼は、どこか他人に対して、常に身構えているようなところがあった。

 番にまでなった正嘉や栄太に対しても、緊張しているような空気をずっと纏っていた。

――――だが、今はそれが綺麗に消えている。

 その事に、正嘉と栄太は直ぐに気付いた。

 そうやって、柔らかい表情で佇む奏は……今まで見た中で、一番可憐で、綺麗だった。

 この変化の原因は、いったい何であろうか?

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