インチキで破廉恥で、途方もなく純情。

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　恵美は、その内包する熱い火を瞳に灯しながら、正嘉を真正面から見据えた。

「私は、お前の関心を一身に浴びた結城奏が憎かった。あいつさえいなくなれば、お前は私の事を見てくれると思っていた！　」

「――」

「だが、違う！　お前は最初から自分の事しか考えていない、ただのガキだ。心を痛めて傷を負っているのが、自分だけだ・・・・・・とでも思ったか!?　」

　恵美の言葉は正しいだけに、次々と正嘉の心を抉った。

　彼は反論もしないまま、棒立ちになって恵美の糾弾を受ける。

　この事態に、止めるべきかどうするかと、恵美付きの供も正嘉の秘書もハラハラとした様子で成り行きに固唾をのんでいる。



　恵美は美しい眦を吊り上げて……しかしどこか憐れむように、正嘉を睨みつけた。



「これからどうするか――――それは、あなたが決める事よ。もう遅いかもしれないし、手遅れかもしれない。でも、何の行動も起こさないで待っているようでは、それこそ全てが取り返しのつかない事になるだけ。私はこれが言いたかった」

「恵美……」

「初めて、私の名前を呼んでくれたな」




　恵美はそう告げると、眩しいほど鮮やかな微笑みを浮かべた。