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「なにっ!? 奏が――――流産した、だと!! 」
正嘉と栄太から事の顛末を聞き、当然であるが七海は激怒した。
「貴様ら、揃いも揃って何てことをしてくれたんだ! 妊娠初期のオメガに、立て続けにそこまで酷いストレスを掛けるなんて……それでも本当に番のつもりなのか!? 」
車椅子の肘掛けをガンッと叩き、七海は二人を睨みつける。
「本来なら、オメガ男体の妊娠初期は『巣』を作って安静にしないと、身体がとても不安定なんだ。考えてもみろ、男が一時的に母の身体に変化するんだぞ? それがどれだけの負担なのか……どうして、もっと真剣に受け止めなかった! 」
七海の正論に、男達は項垂れるしかない。
奏の顔色は悪かったが、しかし割り合い平気そうだったし――――だから大丈夫だと思った。もちろん心配はしていたが、しっかりと自分の足で動いて研究所へも通っていたし。
だからそんな、絶対安静にしなければならない状態だとは考えていなかった。
奏ならば平気だろうと、無意識にそう思い込んでいた。
「それは典型的な正常性バイアスだな」
七海はそう吐き捨てると、重苦しい溜め息をついて両手で顔を覆った。
躊躇いがちに、栄太が口を開く。
「正常性バイアスとは、なんだ……? 」
「――――人間は、心の安定を図るために、ともすれば危機に直面しても鈍感になるよう出来ているのさ。何か普通じゃない出来事が起こってもこんなの大丈夫だと、都合よく脳が判断してしまうんだ」
(※最近の正常性バイアスについての報告では、火山が噴火しても火口付近に留まって撮影し続けてしまい、結果、逃げ遅れたという事故例がある)
七海はもう一度深い溜め息をつくと、切な気に九条へ視線を向けた。
「すまなかったな、九条……」
「――――どうして謝るんだい? 」
「……オレも、そうだった…………身体を休めるようにそれなりに気を付けていたし、薬も出来るだけ影響のない物を選んで服用しているつもりだった。だから、研究も続けられるし、奏の面倒も見れると高を括っていた。お前は最初から反対していたのに……」
「七海……」
「だが、結局――――オレの取った行動は無謀だった。冷静になって考えると、よく分かる。オレは全ての事柄から完全に身を引いて、ここで安静にしていなければならなかったんだ。そうしていれば……確率は50%も無かったが……子供を産むことが出来たかもしれないのに……」
ポロリと、一粒だけ涙を流して、七海はフルっと首を振った。
「ああ、今更後悔しても遅いな。今はオレの事じゃない、とにかく奏の事だ」
「七海――」
「あの子を、むざむざとアメリカに渡すわけにはいかない」
「なにっ!? 奏が――――流産した、だと!! 」
正嘉と栄太から事の顛末を聞き、当然であるが七海は激怒した。
「貴様ら、揃いも揃って何てことをしてくれたんだ! 妊娠初期のオメガに、立て続けにそこまで酷いストレスを掛けるなんて……それでも本当に番のつもりなのか!? 」
車椅子の肘掛けをガンッと叩き、七海は二人を睨みつける。
「本来なら、オメガ男体の妊娠初期は『巣』を作って安静にしないと、身体がとても不安定なんだ。考えてもみろ、男が一時的に母の身体に変化するんだぞ? それがどれだけの負担なのか……どうして、もっと真剣に受け止めなかった! 」
七海の正論に、男達は項垂れるしかない。
奏の顔色は悪かったが、しかし割り合い平気そうだったし――――だから大丈夫だと思った。もちろん心配はしていたが、しっかりと自分の足で動いて研究所へも通っていたし。
だからそんな、絶対安静にしなければならない状態だとは考えていなかった。
奏ならば平気だろうと、無意識にそう思い込んでいた。
「それは典型的な正常性バイアスだな」
七海はそう吐き捨てると、重苦しい溜め息をついて両手で顔を覆った。
躊躇いがちに、栄太が口を開く。
「正常性バイアスとは、なんだ……? 」
「――――人間は、心の安定を図るために、ともすれば危機に直面しても鈍感になるよう出来ているのさ。何か普通じゃない出来事が起こってもこんなの大丈夫だと、都合よく脳が判断してしまうんだ」
(※最近の正常性バイアスについての報告では、火山が噴火しても火口付近に留まって撮影し続けてしまい、結果、逃げ遅れたという事故例がある)
七海はもう一度深い溜め息をつくと、切な気に九条へ視線を向けた。
「すまなかったな、九条……」
「――――どうして謝るんだい? 」
「……オレも、そうだった…………身体を休めるようにそれなりに気を付けていたし、薬も出来るだけ影響のない物を選んで服用しているつもりだった。だから、研究も続けられるし、奏の面倒も見れると高を括っていた。お前は最初から反対していたのに……」
「七海……」
「だが、結局――――オレの取った行動は無謀だった。冷静になって考えると、よく分かる。オレは全ての事柄から完全に身を引いて、ここで安静にしていなければならなかったんだ。そうしていれば……確率は50%も無かったが……子供を産むことが出来たかもしれないのに……」
ポロリと、一粒だけ涙を流して、七海はフルっと首を振った。
「ああ、今更後悔しても遅いな。今はオレの事じゃない、とにかく奏の事だ」
「七海――」
「あの子を、むざむざとアメリカに渡すわけにはいかない」
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