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「分かっている……一番悪いのは、オレだ……アルファ、ベータ、オメガの『番』の契約順位なんかどうでもいいと決心して、ただ、奏の手を離すべきではなかったのに。奏と会社を天秤に掛けて、オレは会社の方を選んでしまった……」
直ぐに後悔して、何とか取り戻そうと足掻いたが。
だがそれも、会社運営の先行きが無事軌道に乗る算段が付いたから――――そんな打算で動いたのだろうと言われれば否定も出来ない。
なんと自分は、愚かで汚い人間なのだろう!
「オレは――最低な男だ……」
「っ……」
打ちひしがれる栄太を、正嘉は無言で見下ろす。
その表情は、何とも複雑なモノだった。
正嘉は、本当に奏の事を欲しいと思っている。
自分の伴侶にしたいと思ったのは本当だ。
だが、番となって結婚し、一緒に暮らしてその先はどうするのかというと――――そこまでは想像していなかった。
だから、子供の事なんてそもそも考えてもいなかったのだ。
その、意識の端にも掛かっていない子供が流れてしまったと聞かされても『だからそれが、どうしたのいうのだ』と、その程度の認識だった。
(……そういえば奏も、その点を確認しようとしていたな。子供が出来たから自分と一緒になろうとしているのか、と。……あの時は、何を言っているんだと思ったが――――オレが感じていた以上に、奏や馬淵にとっては、それはとても重要な事だったのか……)
何だか、自分は何かを大きく間違って見誤っていたような気がする。
しかし今はとにかく、一刻も早く奏を取り戻さねば……。
「命令だ。大使館の人間に、今すぐ行くと連絡をしろ」
「――」
「迎えに行ったはいいが、不審者扱いされるのは御免だからな。しかし、そもそも奏は渡米する意思はないだろうから、直接迎えに行っても大使館側も受け入れてはくれるだろうが……」
だが、栄太の口から出てきた言葉は正嘉を愕然とさせた。
「――――いいや。大使館は治外法権を盾にして、奏を渡さないつもりらしい」
「なにっ!? 」
「逆に聞きたい。お前には、大使館に通じるような外交ルートはないのか? 」
この問いかけに、正嘉は吐き捨てるように言う。
「そんなものはない! だいたい、お前の計画は、奏をアメリカに移送するまでの保護を大使館へ依頼する程度の話だったのではないのか? 」
「……そうだ。そして向こうで、改めて式を挙げようと――――だが、子供を失った以上アメリカに行く必要はないと思い、その旨を伝えようとしたんだ。そうしたらあいつら、切りやがった」
「最悪だな」
「……」
「だが、残念ながらオレは外交ルートには明るくはない。青柳の力が通じるのは国内だけだ」
しかしそれでは、手詰まりなのは明白だ。
どうすればいいのか?
「……そうだ、あいつならば…………可能かもしれない……」
正嘉はそう呟くと、身を翻していた。
直ぐに後悔して、何とか取り戻そうと足掻いたが。
だがそれも、会社運営の先行きが無事軌道に乗る算段が付いたから――――そんな打算で動いたのだろうと言われれば否定も出来ない。
なんと自分は、愚かで汚い人間なのだろう!
「オレは――最低な男だ……」
「っ……」
打ちひしがれる栄太を、正嘉は無言で見下ろす。
その表情は、何とも複雑なモノだった。
正嘉は、本当に奏の事を欲しいと思っている。
自分の伴侶にしたいと思ったのは本当だ。
だが、番となって結婚し、一緒に暮らしてその先はどうするのかというと――――そこまでは想像していなかった。
だから、子供の事なんてそもそも考えてもいなかったのだ。
その、意識の端にも掛かっていない子供が流れてしまったと聞かされても『だからそれが、どうしたのいうのだ』と、その程度の認識だった。
(……そういえば奏も、その点を確認しようとしていたな。子供が出来たから自分と一緒になろうとしているのか、と。……あの時は、何を言っているんだと思ったが――――オレが感じていた以上に、奏や馬淵にとっては、それはとても重要な事だったのか……)
何だか、自分は何かを大きく間違って見誤っていたような気がする。
しかし今はとにかく、一刻も早く奏を取り戻さねば……。
「命令だ。大使館の人間に、今すぐ行くと連絡をしろ」
「――」
「迎えに行ったはいいが、不審者扱いされるのは御免だからな。しかし、そもそも奏は渡米する意思はないだろうから、直接迎えに行っても大使館側も受け入れてはくれるだろうが……」
だが、栄太の口から出てきた言葉は正嘉を愕然とさせた。
「――――いいや。大使館は治外法権を盾にして、奏を渡さないつもりらしい」
「なにっ!? 」
「逆に聞きたい。お前には、大使館に通じるような外交ルートはないのか? 」
この問いかけに、正嘉は吐き捨てるように言う。
「そんなものはない! だいたい、お前の計画は、奏をアメリカに移送するまでの保護を大使館へ依頼する程度の話だったのではないのか? 」
「……そうだ。そして向こうで、改めて式を挙げようと――――だが、子供を失った以上アメリカに行く必要はないと思い、その旨を伝えようとしたんだ。そうしたらあいつら、切りやがった」
「最悪だな」
「……」
「だが、残念ながらオレは外交ルートには明るくはない。青柳の力が通じるのは国内だけだ」
しかしそれでは、手詰まりなのは明白だ。
どうすればいいのか?
「……そうだ、あいつならば…………可能かもしれない……」
正嘉はそう呟くと、身を翻していた。
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