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でも、今ならまだ――――やり直せるような気がする。
子供の事は残念だったが会社さえ無事なら……思った以上の協力者達が名乗り出たのだ。もう、馬淵コーポレーションは揺ぎ無いだろう。
あんな若造にいいように罵られたが、もう次は、こちらも反撃に転じる事は可能だ。
(そうだ……オレは何を血迷っていたんだ。馬淵の次期当主なんてどうでもいいじゃないか。とにかく今は、奏をもう一度この手に取り戻すことが先決だ)
栄太は、奏の事がやはり忘れられない。
何度も抱いたのに、その心はなかなか開かなくて。
ようやく思いを通じ合ったと思ったら、二月と経たずにこんな事に――――それもこれも全て、あの青柳正嘉が元凶だ。
奏は悪くないし、自分も悪くない。
何もかも、あいつが悪い。
涼しい顔をして奏の事など愛してもいないし何とも思っていない等と嘯いておいて、そのくせしっかりと奏を口説いていたとは。
とんだ食わせ物だっ!
しかも奏は、なんとあの人非人を愛する事にしたと言う。
可哀想に、彼は騙されているのだ。
無理やり項を噛み『番の上書き』をされたというのに、もうあいつの毒の侵されている。ここは何としても、自分が救って目を覚まさせてやらなければ。
根気強く説得すれば、奏もきっと目を覚ましてくれるだろう。
それに何より、今は、流産してしまった彼を優しく慰めてやらなければ。
きっとショックで泣いているだろう……可哀想に。
今回の事態は、事を急いで進めようとした自分も悪かったのだし、そこは素直に認めて謝らなければだめだろう。
(奏――すまなかった。これからはずっと、オレがお前を護ってやるからな……)
栄太はそう決心すると、電話に向かい再度声を掛けた。
「いいな? オレはこれから奏を迎えに行く。今回の悲しい事故の事を……相殺してやる代わりに、おとなしく奏の身柄はこちらへ渡すんだ」
だが、返って来た答えは意に反するものだった。
『それはお断りします』
「っ! 」
『カナデは、アメリカ人としてこちらへ渡航して頂きます。日本ではオメガ研究はあまり重要視されていないようですが、アメリカを始めとする諸外国は、この分野に関する研究に興味津々なのですよ。彼は、その分野のエキスパートの一人です。むざむざと帰すわけにはいかない』
「何をバカな事を――」
『カナデも、それを望んでいます』
そのセリフに、栄太は耳を疑った。
「嘘をつくな! 奏がそんな……」
『本当です。彼は大変なショックを受けていて、もうこの国には居たくないと言っています。なので、今後の彼の身柄は我々で保護させて頂きます』
そう告げると、電話はブツリと切れた。
栄太は呆然として立ち尽くす。
(奏が――ここには居たくないと言っていた、だと……? )
そんなバカなと思う反面、それも有り得るだろうとも感じる。
なんせ、流産という最悪の結果になってしまったのだ。
母である奏の方が、栄太よりもずっと衝撃を受けただろう。
絶望して、悲しみに打ちひしがれていてもおかしくはない。
――――だが、あの奏が、完成目前まで来ているらしい新薬開発を放り投げて、アメリカに行くとは考えられない。
それにここで奏に去られたら、本当に繋がりが無くなってしまう。
アルファに横取りされてしまった上に唯一の子供も夢と消えてしまい、もう栄太とは『番』でもないのだから。
(……こんな事、誰に相談すればいいんだ? 大使館は日本の司法が介入できないんだ。警察に相談しても無駄だろう)
もう一度、大使館へ電話を掛けてみるが、着拒になってしまったのか全く通じない。
「それを貸せっ! 」
栄太は部下の携帯を奪い取り再びかけてみるが、ただ受話器の向こうから無機質な音声が流れて来て『この電話はアメリカ大使館の自動受付となっております。ご用件は、該当する番号を1~5まで……』とガイド音声が鳴るだけだ。
子供の事は残念だったが会社さえ無事なら……思った以上の協力者達が名乗り出たのだ。もう、馬淵コーポレーションは揺ぎ無いだろう。
あんな若造にいいように罵られたが、もう次は、こちらも反撃に転じる事は可能だ。
(そうだ……オレは何を血迷っていたんだ。馬淵の次期当主なんてどうでもいいじゃないか。とにかく今は、奏をもう一度この手に取り戻すことが先決だ)
栄太は、奏の事がやはり忘れられない。
何度も抱いたのに、その心はなかなか開かなくて。
ようやく思いを通じ合ったと思ったら、二月と経たずにこんな事に――――それもこれも全て、あの青柳正嘉が元凶だ。
奏は悪くないし、自分も悪くない。
何もかも、あいつが悪い。
涼しい顔をして奏の事など愛してもいないし何とも思っていない等と嘯いておいて、そのくせしっかりと奏を口説いていたとは。
とんだ食わせ物だっ!
しかも奏は、なんとあの人非人を愛する事にしたと言う。
可哀想に、彼は騙されているのだ。
無理やり項を噛み『番の上書き』をされたというのに、もうあいつの毒の侵されている。ここは何としても、自分が救って目を覚まさせてやらなければ。
根気強く説得すれば、奏もきっと目を覚ましてくれるだろう。
それに何より、今は、流産してしまった彼を優しく慰めてやらなければ。
きっとショックで泣いているだろう……可哀想に。
今回の事態は、事を急いで進めようとした自分も悪かったのだし、そこは素直に認めて謝らなければだめだろう。
(奏――すまなかった。これからはずっと、オレがお前を護ってやるからな……)
栄太はそう決心すると、電話に向かい再度声を掛けた。
「いいな? オレはこれから奏を迎えに行く。今回の悲しい事故の事を……相殺してやる代わりに、おとなしく奏の身柄はこちらへ渡すんだ」
だが、返って来た答えは意に反するものだった。
『それはお断りします』
「っ! 」
『カナデは、アメリカ人としてこちらへ渡航して頂きます。日本ではオメガ研究はあまり重要視されていないようですが、アメリカを始めとする諸外国は、この分野に関する研究に興味津々なのですよ。彼は、その分野のエキスパートの一人です。むざむざと帰すわけにはいかない』
「何をバカな事を――」
『カナデも、それを望んでいます』
そのセリフに、栄太は耳を疑った。
「嘘をつくな! 奏がそんな……」
『本当です。彼は大変なショックを受けていて、もうこの国には居たくないと言っています。なので、今後の彼の身柄は我々で保護させて頂きます』
そう告げると、電話はブツリと切れた。
栄太は呆然として立ち尽くす。
(奏が――ここには居たくないと言っていた、だと……? )
そんなバカなと思う反面、それも有り得るだろうとも感じる。
なんせ、流産という最悪の結果になってしまったのだ。
母である奏の方が、栄太よりもずっと衝撃を受けただろう。
絶望して、悲しみに打ちひしがれていてもおかしくはない。
――――だが、あの奏が、完成目前まで来ているらしい新薬開発を放り投げて、アメリカに行くとは考えられない。
それにここで奏に去られたら、本当に繋がりが無くなってしまう。
アルファに横取りされてしまった上に唯一の子供も夢と消えてしまい、もう栄太とは『番』でもないのだから。
(……こんな事、誰に相談すればいいんだ? 大使館は日本の司法が介入できないんだ。警察に相談しても無駄だろう)
もう一度、大使館へ電話を掛けてみるが、着拒になってしまったのか全く通じない。
「それを貸せっ! 」
栄太は部下の携帯を奪い取り再びかけてみるが、ただ受話器の向こうから無機質な音声が流れて来て『この電話はアメリカ大使館の自動受付となっております。ご用件は、該当する番号を1~5まで……』とガイド音声が鳴るだけだ。
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