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「その腹の子は、ベータの子種の可能性も残っている。悲観して間違いは犯すな」
「は――はい…………」
また、涙が溢れた。
――――可能性で考えれば、正嘉の子である可能性の方が高いのは分かっているが、それでも七海の言葉は嬉しかった。
「僕――諦めないで頑張ります。5年も期待して待ってくれた栄太さんの気持ちに応えたいから――でも、どっちにしても……僕の身体に宿った命ならば、例えどちらの子だとしても――全力で護って育てたいです……」
「ああ、その意気だ。お前は本当にいい子だね、オレは大好きだよ」
「はい」
健気に笑う奏を、七海は本当に優しく目を細めて見遣った。
(本当にな、お前が幸せになる所を見ない事には死んでも死にきれない気分だよ)
小さく息をつき、七海は処方箋の説明をする。
「じゃあ、こっちの粉薬の方は、どうしても辛い時にだけ飲むよう調整したから――普段は、このアセトアミノフェンを主成分にした混合薬を服用しろ。ただ、服用は一日に何度も行わないように」
「はい――」
「それから……今日と明日は、ここに泊まれ」
「え? 」
「そんな状態の奏を一人でマンションに帰すわけにはいかないよ。どうせ馬淵は仕事に掛かりっきりで来れるかどうかも分からないんだろう? 」
「……栄太さんは、今忙しいようだから…………」
「だから! オレはそこが気に入らないんだ! 今一番優先しなけりゃならないのは、会社よりも番である奏の方の筈だろう!! 」
奏の心が手に入った途端に、仕事を言い訳にして横着を始めたような気がして、七海はそれが本気で気に入らない。
オメガの男体がどれだけ心細い思いをしているのか、少しでも考えた事があるのか?
そう憤る七海に、奏は微笑み掛けた。
「――先輩は、本当に優しいですね…………」
「奏……」
「僕は、大丈夫ですよ。今までだって、これ以上に辛い事はたくさんあったんだし……え、えへへっ」
無理に笑いながら、クシャクシャになったハンカチで目元を拭う奏が、哀れで仕方がない。
嘆息しながら、七海は引き出しを開けてタオルを取り出した。
「……ほら、代わりにこれを使え。それはもう洗ってやるから――」
「え? 」
「汚れて皺くちゃじゃないか。シャツも新しいのを用意してやるから――」
そう言いながら手を伸ばしたところ、奏は何故かパッと身を逸らした。
無意識なのか、ハンカチを取られないようにギュッと握り締めている。
「奏? 」
「あ――」
奏は、茫然自失となった。
血が付いて薄汚れてしまっているこのハンカチは、自分の物ではない。
一体いつから、自分はこれを握り締めていたのだろうか?
「あ…………あぁっ! 」
「奏! 」
卒倒して頽れた奏に、七海は仰天した。
しかし今の自分では、奏を抱えて休ませる事は出来ない。
故に七海は、ホットラインで急遽自身の番を呼び出す事にした。
「九条! 今すぐ屋敷の診療室へ来てくれ! 」
『分った。直ぐ行く! 』
理由も訊かずに、九条は速攻で返事をかえした。
「は――はい…………」
また、涙が溢れた。
――――可能性で考えれば、正嘉の子である可能性の方が高いのは分かっているが、それでも七海の言葉は嬉しかった。
「僕――諦めないで頑張ります。5年も期待して待ってくれた栄太さんの気持ちに応えたいから――でも、どっちにしても……僕の身体に宿った命ならば、例えどちらの子だとしても――全力で護って育てたいです……」
「ああ、その意気だ。お前は本当にいい子だね、オレは大好きだよ」
「はい」
健気に笑う奏を、七海は本当に優しく目を細めて見遣った。
(本当にな、お前が幸せになる所を見ない事には死んでも死にきれない気分だよ)
小さく息をつき、七海は処方箋の説明をする。
「じゃあ、こっちの粉薬の方は、どうしても辛い時にだけ飲むよう調整したから――普段は、このアセトアミノフェンを主成分にした混合薬を服用しろ。ただ、服用は一日に何度も行わないように」
「はい――」
「それから……今日と明日は、ここに泊まれ」
「え? 」
「そんな状態の奏を一人でマンションに帰すわけにはいかないよ。どうせ馬淵は仕事に掛かりっきりで来れるかどうかも分からないんだろう? 」
「……栄太さんは、今忙しいようだから…………」
「だから! オレはそこが気に入らないんだ! 今一番優先しなけりゃならないのは、会社よりも番である奏の方の筈だろう!! 」
奏の心が手に入った途端に、仕事を言い訳にして横着を始めたような気がして、七海はそれが本気で気に入らない。
オメガの男体がどれだけ心細い思いをしているのか、少しでも考えた事があるのか?
そう憤る七海に、奏は微笑み掛けた。
「――先輩は、本当に優しいですね…………」
「奏……」
「僕は、大丈夫ですよ。今までだって、これ以上に辛い事はたくさんあったんだし……え、えへへっ」
無理に笑いながら、クシャクシャになったハンカチで目元を拭う奏が、哀れで仕方がない。
嘆息しながら、七海は引き出しを開けてタオルを取り出した。
「……ほら、代わりにこれを使え。それはもう洗ってやるから――」
「え? 」
「汚れて皺くちゃじゃないか。シャツも新しいのを用意してやるから――」
そう言いながら手を伸ばしたところ、奏は何故かパッと身を逸らした。
無意識なのか、ハンカチを取られないようにギュッと握り締めている。
「奏? 」
「あ――」
奏は、茫然自失となった。
血が付いて薄汚れてしまっているこのハンカチは、自分の物ではない。
一体いつから、自分はこれを握り締めていたのだろうか?
「あ…………あぁっ! 」
「奏! 」
卒倒して頽れた奏に、七海は仰天した。
しかし今の自分では、奏を抱えて休ませる事は出来ない。
故に七海は、ホットラインで急遽自身の番を呼び出す事にした。
「九条! 今すぐ屋敷の診療室へ来てくれ! 」
『分った。直ぐ行く! 』
理由も訊かずに、九条は速攻で返事をかえした。
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