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それを、一方的に送り付けて『好意の証』だったとでもいうつもりか?
それなら、心底、奏の事をバカにしている。
「馬淵さんあなた、ここのところ僕が本格的なヒートに入る前に、胸やら背中やら――あそこも、やけに入念に嘗め回していましたが、あれはもしや愛撫のつもりだったんですか? 」
「……」
無言なのはyesの意味だろう。
フンと鼻で笑い、奏は吐き捨てる。
「――不愉快なだけですよ。こっちは、何を考えてるんだか分からなくてずっと気味が悪かったです。僕があなたとセックスする度に思ったのは、一分一秒でも早く発情期が終わってくれと、ただその一念だけでしたよ」
「奏――」
「僕は今日、抑制剤を飲んできました。このゴミを返すのと、あなたともうセックスをする気は無いと、ただそれだけを言うつもりでしたから」
すると、馬淵は傷付いたような顔になった。
「そんなに――オレと寝るのは苦痛だったのか? 」
「当たり前でしょう。あなたは、僕の運命の相手じゃない。何度言わせる気です? 」
奏にとっては、気絶ヤギと診断された、激痛を伴う発情期。
男の精を受けるか薬を飲むか……治まる方法は、その二つしかなかった。
それなら、出来うることなら、運命と信じた正嘉によって優しく宥めて欲しかった。
こんな、ベータの成金男の世話になどなりたくはなかった……!
(僕にだって、プライドはあったんだ……それなのに、こいつは――! )
ふぅ……と、深く息を吐き、奏は平常心を取り戻す。
「――――今になって番になってくれと言われても迷惑なだけです。それこそ、複数いるであろうオメガの女にでも言ってやったらどうです? 喜びますよ、彼女達は」
「オレは、お前を…………愛しているんだ」
やけに恋情のこもったような言い方に、奏の柳眉がピクリと動く。
だがそれは、愛の告白に感動しての反応ではない。
本当に不快そうに、奏は呟いた。
「だから、僕はあなたが大嫌いだと言っている。そんなに僕を怒らせたいのですか? 」
「か、奏っ! 」
「さようなら、馬淵さん。僕の5年間を潰したんだから、それで借金は0ですね。これから僕の実家が何か言ってきても、僕はもう関係ありませんから」
あとはもう馬淵など見向きもせずに、奏はスッと立ち上がる。
馬淵はまだ何か言いたそうだったが、いつまでも不愉快な事ばかり喋る相手など、律儀に構っていられない。
奏は馬淵を残し、そのロビーラウンジを後にした。
しかし、ホテルを一歩出た所で、奏は呼び止められた。
「待ってください! 」
初めて聞く、女の声だ。
彼を呼び止めたのは、このホテルの客室係をしてるベータの女性だった。
それなら、心底、奏の事をバカにしている。
「馬淵さんあなた、ここのところ僕が本格的なヒートに入る前に、胸やら背中やら――あそこも、やけに入念に嘗め回していましたが、あれはもしや愛撫のつもりだったんですか? 」
「……」
無言なのはyesの意味だろう。
フンと鼻で笑い、奏は吐き捨てる。
「――不愉快なだけですよ。こっちは、何を考えてるんだか分からなくてずっと気味が悪かったです。僕があなたとセックスする度に思ったのは、一分一秒でも早く発情期が終わってくれと、ただその一念だけでしたよ」
「奏――」
「僕は今日、抑制剤を飲んできました。このゴミを返すのと、あなたともうセックスをする気は無いと、ただそれだけを言うつもりでしたから」
すると、馬淵は傷付いたような顔になった。
「そんなに――オレと寝るのは苦痛だったのか? 」
「当たり前でしょう。あなたは、僕の運命の相手じゃない。何度言わせる気です? 」
奏にとっては、気絶ヤギと診断された、激痛を伴う発情期。
男の精を受けるか薬を飲むか……治まる方法は、その二つしかなかった。
それなら、出来うることなら、運命と信じた正嘉によって優しく宥めて欲しかった。
こんな、ベータの成金男の世話になどなりたくはなかった……!
(僕にだって、プライドはあったんだ……それなのに、こいつは――! )
ふぅ……と、深く息を吐き、奏は平常心を取り戻す。
「――――今になって番になってくれと言われても迷惑なだけです。それこそ、複数いるであろうオメガの女にでも言ってやったらどうです? 喜びますよ、彼女達は」
「オレは、お前を…………愛しているんだ」
やけに恋情のこもったような言い方に、奏の柳眉がピクリと動く。
だがそれは、愛の告白に感動しての反応ではない。
本当に不快そうに、奏は呟いた。
「だから、僕はあなたが大嫌いだと言っている。そんなに僕を怒らせたいのですか? 」
「か、奏っ! 」
「さようなら、馬淵さん。僕の5年間を潰したんだから、それで借金は0ですね。これから僕の実家が何か言ってきても、僕はもう関係ありませんから」
あとはもう馬淵など見向きもせずに、奏はスッと立ち上がる。
馬淵はまだ何か言いたそうだったが、いつまでも不愉快な事ばかり喋る相手など、律儀に構っていられない。
奏は馬淵を残し、そのロビーラウンジを後にした。
しかし、ホテルを一歩出た所で、奏は呼び止められた。
「待ってください! 」
初めて聞く、女の声だ。
彼を呼び止めたのは、このホテルの客室係をしてるベータの女性だった。
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