ナラズモノ

亜衣藍

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「えっ……? その、聖さんって――つまりオレの父親が、危篤ってことですか? 」

 ユウは、知らない男性から、電話越しに突如告げられる、緊迫した状況に戸惑っていた。

 昨夜は、以前からユウの父親を名乗っていた御堂聖という男と、夜10時に公園で待ち合わせをしたのだが、結局その場に御堂聖は現れず、仕方なしにユウはそのままホテルへと戻っていた。


 しかし、一夜明けた今日。


 早朝から携帯電話が鳴り、気になって出てみたところ、知らない年配の男の声で○○区の○○病院に直ぐに来てくれと言う。

 最初は、誰かと間違ったのではないだろうかと訝しんだが、切迫した様子で告げられるかなり緊急した状況に、一気に目が覚めた。

 どういう急転直下の出来事があったのか知らぬが、なんと御堂聖は、今現在、死線を彷徨っている最中だと言う。


(危篤状態だって!? 昨日、電話で話した時は――あんなに元気そうだったのに……)


 しかも御堂聖は、本当にユウと会うのが嬉しそうだった。

 電話越しに聞こえる特別弾んだ声が、それを証明していた。

 それなのに、待ち合わせ場所に来なかった。

 ヒドイ、またしても自分勝手な大人に騙されたと、空しく悲しい気持ちになっていたが

――――それはユウの早合点だったのか。


(……何てことだ!? あの人は、来たくても、来られなかったのかっ! )

 直ぐにその事が分かり、ユウは慌てて身支度を整える。

 続けて電話越しに、指示が出された。

『○○病院にゃあ、今、目つきの悪い野郎が一杯いやがるから、お前さんは西側のB口から入りねぇ。そこにオレが直接迎えに行くからよぉ』


「――分かりました。タクシーで、直ぐに向かいます。○○病院の西側のB口ですね」

 ユウはそう返し、急いでホテルを後にした。


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