ナラズモノ

亜衣藍

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 だが、

「うるせぇ! こいつぁ、オレんだ! 天黄にも青菱にも渡さねぇぞ!! 」

 と、妄執の果てに気の触れたような答えが返って来た。
 
 舌打ちをして、正弘は拡声器を警官に返す。

「参ったぜ。こいつぁ、本当に膠着状態だ」

 この騒ぎに、マスコミや野次馬も徐々に集まってきている。

 正弘たちも、うかうかしていられない。

――――どうすればいい? どうやったら救える?

 手出しできぬまま、地団駄を踏む彼らに、この時声が掛けられた。

「何をやってんだっ!? 」

 その声に振り返ると、そもそもの元凶である青菱史郎が、舎弟を連れて駆け付けて来たところだった。

 それを見て、正弘は怒りの声を上げる。

「なんでぃ、青菱の小僧がっ! 二度と顔を見せんなと言ったの、もう忘れたか!? 」

 ビリビリと空気が震えるような一喝に、周囲の者はヒッと首を竦める。

 史郎も一瞬足を止めたが、それは本当に一瞬。

 彼は、惑うことなく歩を進めてきた。

「――――あんたの怒りは尤もだ。だが、この状況はどうした? 聖は? 」

「……あの車ン中だ。安永のヤツが、ドラッグで意識のない聖を人質に、立てこもってやがんのさ」

「何だとっ! 」

「かなり大量に打たれちまったようだ。早いとこ病院に連れ込まねぇと、命に係わる。だが、安永の阿呆ぅ、拳銃を手にパンパン撃ちやがって手が出せねぇ」

 正弘がそう言うと、史郎は、車の方へ向き直った。そして彼は、正弘以上の大声で声を上げる。

「聖――――! 」

「っ!! 」

 周囲の男達は、驚いて彼に視線を向けた。

 その中で、史郎は怯むことなく続ける。



「てめぇ、その程度でくたばる様なヤワな野郎じゃねぇだろうがっ! 」



 スッと息を吸い、また再び口を開く。

「一発、いつもの根性見せろや――! 」

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