ナラズモノ

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
71 / 102
16

16-5

しおりを挟む
「はいっ」

「あいつらを始末しろ。生かしておいたら、絶対にあいつらの口から、聖がここにいる事が洩れちまう」

「ええっ! しかし、そうなると合法ドラッグはどうなるんです? まだ製造方法を手に入れてないですよ? 」

 尤もな問い掛けに、安永は、そんな物はもうどうでもいいと頭を振る。

 そして、白濁の汚泥の中で小さく震えている聖の身体を、急いでタオルで包む。

「こいつさえ手に入ったらオレは本望だ。青菱の若頭だろうと何だろうと渡すもんかよ」

「しかし――」

「早く車を用意しろ! こうなったら、直接こいつを大西の所へ連れて行く! 直ぐに連絡を取り直せ、口は堅いハズだっ! 」

 せっかく手に入れた宝を、ここで壊してしまっては元も子もない。

 一度くらいなら味を見るのもいいだろうと思い、無茶はするなと念を押したつもりだったが、あんなバカなガキどもなど、最初から信用するべきではなかった。

 汚れた身体を拭ってやりながら安永は激しく後悔する。日夜この美体を安永の自由にできる、ようやく巡ってきたチャンスなのだ。


 絶対に、逃すわけにはいかない。


 地下に閉じ込めて可愛がるか、どこかの離れ小島に閉じ込めてゆっくりと調教するか。

 考えただけで、安永は興奮を覚えて仕方がない。
 
 今すぐにでも、聖の身体にむしゃぶりつきたいのを堪え、配下を振り返る。

「さぁ、連れて行くぞ! 」

「はいっ」

 逞しい護衛の腕に抱え上げられながら、聖は小さく呻いた。

「う……」

 焦点の合わない瞳を瞬かせ、かすかに唇を動かす。

「いかな……と。一緒にくら――そ……て」



 夢を見ていた。長い夢を。



 それは、聖が……聖自身が、子供の頃から夢見ていた、切なく哀しい夢だった。

 他の家のように、オレも、親子仲良く暮らしたいのに、と。温かい家庭に、オレも、ずっとずっと憧れていたのだと――――。

 寂しくて孤独な、冷たいだけの養護施設で、温かい家庭を夢想していた。優しい両親に愛される、幸せな子供が羨ましいと。


 夢見ながら、聖は今度こそ意識を失った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...