ナラズモノ

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
56 / 102
14

14-1

しおりを挟む

 有賀沙也加を始めとする、ジュピタープロに所属する俳優達の合法ドラッグ・スキャンダルは、思った以上のダメージだった。

 今回の重大な契約違反で、所属事務所のジュピタープロダクションが負う損害賠償額は、契約金の2倍が相場といわれる違約金を考えると、総額3億円は超えると算出された。

 ジュピタープロは株を上場していないので、株価が急落して云々といった事にはならないものの、これで頼りにしていたカタギの株主たちが続々と引き上げてしまった。

 代わりに出資に名乗りを上げたのは、当然のように、天黄組に所縁のある――――ハッキリ言わせてもらえば、聖の身体に溺れていた親分衆と、青菱だった。

 中でも青菱は、どこの極道一家よりも潤沢な資金をチラつかせながら、パトロンになってやるなどと臆面もなく言ってきた。

 だがこれを聖は頑として拒み、どうにか自己資金と新規の融資で穴を埋めようと奔走した。

 出来るだけ、天黄からの支援にも頼らないようにと、聖は動いたのだ。

――――どうして?

 そんなの、決まっている。

 ジュピタープロを、必ず真っ当な芸能プロダクションに生まれ変わらせたいからだ。

 天黄古巣と言えど、可能な限り極道の力は借りたくない。

 聖は、それまでの彼からは考えられないくらい方々に頭を下げ、銀行にも何度も通って、平身低頭に懇願した。

 どうか、ジュピターの存続に協力してほしいと。力を貸してくれと。

 頼りになりそうな有力者の元を次々と訪問しては、聖は額ずいて頼み込んだ。

 プライドが高く、常ならば高嶺の花であるはずの若く美しい彼が、見るからにやつれた様子で切々と訴える様子は、それだけで嗜虐心をそそった。

 極道ならずとも、否応なく魅せられる。

 男達は生唾を呑みながら、聖の美貌と、しなやかで婉麗な身体に惹きつけられた。

「……それなら、その誠意とやらを見せてもらえるかな」

 そう行く先々で誘われては、聖は惜しみなく身体を開いた。

 躊躇ったり、尻込みしている場合ではない。

 これでジュピタープロが生き残るなら、それで構わない。

 文字通り聖は、身体を張って尽力したのだ。

 そして、どうにかカネの都合がついた次は、マスコミだ。

 同じ内容でも、記事に悪意のある書き方と同情交じりに書かれるのとでは、世論に天と地の違いが生じる。

 聖はこれまでマスコミ関係者はそれとなく敬遠していたので、芸能事務所としての通常の 付き合いはあったものの、特に個別にネットワークは築いていなかった。

 だが、もう好き嫌いで会う相手を選んでいる余裕はない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

ワルモノ

亜衣藍
BL
西暦1988年、昭和の最後の年となる63年、15歳の少年は一人東京へ降り立った……! 後に『傾国の美女』と讃えられるようになる美貌の青年、御堂聖の物語です。 今作は、15歳の聖少年が、極道の世界へ飛び込む切っ掛けとなる話です。 舞台は昭和末期!  時事ネタも交えた意欲作となっております。 ありきたりなBLでは物足りないという方は、是非お立ち寄りください。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

俺の人生を捧ぐ人

宮部ネコ
BL
誰かを好きになるなんて、気持ち悪いと思ってた幼少期の自分。 高校一年の途中、あいつと再会したことでその気持ちが揺らぐ。 気付いたら止められない気持ちを一体どうすればいいのか。 俺はずっと持て余し、十年ほどの片思いを続けた後、決めた。気持ちを伝えようと。 ※一応完結しましたが、現在修正しています。 そのため一度連載中に戻していますのであしからず。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

処理中です...