ナラズモノ

亜衣藍

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 有賀沙也加を始めとする、ジュピタープロに所属する俳優達の合法ドラッグ・スキャンダルは、思った以上のダメージだった。

 今回の重大な契約違反で、所属事務所のジュピタープロダクションが負う損害賠償額は、契約金の2倍が相場といわれる違約金を考えると、総額3億円は超えると算出された。

 ジュピタープロは株を上場していないので、株価が急落して云々といった事にはならないものの、これで頼りにしていたカタギの株主たちが続々と引き上げてしまった。

 代わりに出資に名乗りを上げたのは、当然のように、天黄組に所縁のある――――ハッキリ言わせてもらえば、聖の身体に溺れていた親分衆と、青菱だった。

 中でも青菱は、どこの極道一家よりも潤沢な資金をチラつかせながら、パトロンになってやるなどと臆面もなく言ってきた。

 だがこれを聖は頑として拒み、どうにか自己資金と新規の融資で穴を埋めようと奔走した。

 出来るだけ、天黄からの支援にも頼らないようにと、聖は動いたのだ。

――――どうして?

 そんなの、決まっている。

 ジュピタープロを、必ず真っ当な芸能プロダクションに生まれ変わらせたいからだ。

 天黄古巣と言えど、可能な限り極道の力は借りたくない。

 聖は、それまでの彼からは考えられないくらい方々に頭を下げ、銀行にも何度も通って、平身低頭に懇願した。

 どうか、ジュピターの存続に協力してほしいと。力を貸してくれと。

 頼りになりそうな有力者の元を次々と訪問しては、聖は額ずいて頼み込んだ。

 プライドが高く、常ならば高嶺の花であるはずの若く美しい彼が、見るからにやつれた様子で切々と訴える様子は、それだけで嗜虐心をそそった。

 極道ならずとも、否応なく魅せられる。

 男達は生唾を呑みながら、聖の美貌と、しなやかで婉麗な身体に惹きつけられた。

「……それなら、その誠意とやらを見せてもらえるかな」

 そう行く先々で誘われては、聖は惜しみなく身体を開いた。

 躊躇ったり、尻込みしている場合ではない。

 これでジュピタープロが生き残るなら、それで構わない。

 文字通り聖は、身体を張って尽力したのだ。

 そして、どうにかカネの都合がついた次は、マスコミだ。

 同じ内容でも、記事に悪意のある書き方と同情交じりに書かれるのとでは、世論に天と地の違いが生じる。

 聖はこれまでマスコミ関係者はそれとなく敬遠していたので、芸能事務所としての通常の 付き合いはあったものの、特に個別にネットワークは築いていなかった。

 だが、もう好き嫌いで会う相手を選んでいる余裕はない。
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