27 / 102
7
7-1
しおりを挟む
「お勤め、ご苦労様でした」
外に出たところで、迎えに来ていた舎弟が頭を下げてそう声をかけてきた。
「おお」
軽く労い、素早く車へ滑り込む。
車が走り出したところで、口を開く。
「今、どんな案配なんだ? 」
「兄貴が入っている間に起こった大きなことは、まぁ、我らが天黄組が再び勢力を伸ばしてきたってことですかね。青菱は相変わらずですが、傘下には例の暴対法の影響もあって解散しちまった組も出てきました。昔ながらの極道には厳しい状況ですよ。あとは、今、一番厄介なのは――」
「半グレ、か」
その言葉に、舎弟は頷いた。
この頃、台頭してきたその組織は、極道ではない。
元々は、暴走族や不良集団といった、アウトローに属していた若者たちが徒党を組み、組織化して狂暴化した集団の総称だ。
中国残留孤児の二世、三世、それに外国人が混じった集団も、半グレに属する。
あいにくと、この狂暴な集団は暴力団ではない。
やってることは極道よりエグイ面もあるのに、一般人の仮面とヤクザを上手いこと使い分けているせいで『暴対法』の適用外になってしまう。
本職としては何とも不公平な気もするが、一応奴らは一般人であるので、こちらが手を出した場合、しょっ引かれるのは半グレではなくヤクザの方になってしまうのだ。
そのせいで、十対一の状況での傷害事件であったのに、たまたま向こうに重傷患者が出たということで、正当防衛は認められずこちらの方が厳しく罰せられてしまった。
男は、結局二年も刑務所へ入る事になったのだ。
……執行猶予中の騒動だっただけに実刑をくらってしまった。全く、不公平な話だ。
「――あいつは、今どうしている? 」
「あいつ、ですか? 」
舎弟が訊き返すと、咳ばらいをしながら男は言い直す。
「御堂聖だ」
「ああ、御堂さんですか。天黄の持ち会社だった芸能事務所の社長に就いて、映画にドラマにCMと、上手いことやってますよ」
「はぁ!? 」
最後に会ったときは、たしか――――
「青菱の若頭は、どうした? 」
外に出たところで、迎えに来ていた舎弟が頭を下げてそう声をかけてきた。
「おお」
軽く労い、素早く車へ滑り込む。
車が走り出したところで、口を開く。
「今、どんな案配なんだ? 」
「兄貴が入っている間に起こった大きなことは、まぁ、我らが天黄組が再び勢力を伸ばしてきたってことですかね。青菱は相変わらずですが、傘下には例の暴対法の影響もあって解散しちまった組も出てきました。昔ながらの極道には厳しい状況ですよ。あとは、今、一番厄介なのは――」
「半グレ、か」
その言葉に、舎弟は頷いた。
この頃、台頭してきたその組織は、極道ではない。
元々は、暴走族や不良集団といった、アウトローに属していた若者たちが徒党を組み、組織化して狂暴化した集団の総称だ。
中国残留孤児の二世、三世、それに外国人が混じった集団も、半グレに属する。
あいにくと、この狂暴な集団は暴力団ではない。
やってることは極道よりエグイ面もあるのに、一般人の仮面とヤクザを上手いこと使い分けているせいで『暴対法』の適用外になってしまう。
本職としては何とも不公平な気もするが、一応奴らは一般人であるので、こちらが手を出した場合、しょっ引かれるのは半グレではなくヤクザの方になってしまうのだ。
そのせいで、十対一の状況での傷害事件であったのに、たまたま向こうに重傷患者が出たということで、正当防衛は認められずこちらの方が厳しく罰せられてしまった。
男は、結局二年も刑務所へ入る事になったのだ。
……執行猶予中の騒動だっただけに実刑をくらってしまった。全く、不公平な話だ。
「――あいつは、今どうしている? 」
「あいつ、ですか? 」
舎弟が訊き返すと、咳ばらいをしながら男は言い直す。
「御堂聖だ」
「ああ、御堂さんですか。天黄の持ち会社だった芸能事務所の社長に就いて、映画にドラマにCMと、上手いことやってますよ」
「はぁ!? 」
最後に会ったときは、たしか――――
「青菱の若頭は、どうした? 」
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ワルモノ
亜衣藍
BL
西暦1988年、昭和の最後の年となる63年、15歳の少年は一人東京へ降り立った……!
後に『傾国の美女』と讃えられるようになる美貌の青年、御堂聖の物語です。
今作は、15歳の聖少年が、極道の世界へ飛び込む切っ掛けとなる話です。
舞台は昭和末期!
時事ネタも交えた意欲作となっております。
ありきたりなBLでは物足りないという方は、是非お立ち寄りください。
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺の人生を捧ぐ人
宮部ネコ
BL
誰かを好きになるなんて、気持ち悪いと思ってた幼少期の自分。
高校一年の途中、あいつと再会したことでその気持ちが揺らぐ。
気付いたら止められない気持ちを一体どうすればいいのか。
俺はずっと持て余し、十年ほどの片思いを続けた後、決めた。気持ちを伝えようと。
※一応完結しましたが、現在修正しています。
そのため一度連載中に戻していますのであしからず。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる