ナラズモノ

亜衣藍

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「お勤め、ご苦労様でした」

 外に出たところで、迎えに来ていた舎弟が頭を下げてそう声をかけてきた。

「おお」

 軽く労い、素早く車へ滑り込む。

 車が走り出したところで、口を開く。
 
「今、どんな案配なんだ? 」


「兄貴が入っている間に起こった大きなことは、まぁ、我らが天黄組が再び勢力を伸ばしてきたってことですかね。青菱は相変わらずですが、傘下には例の暴対法の影響もあって解散しちまった組も出てきました。昔ながらの極道には厳しい状況ですよ。あとは、今、一番厄介なのは――」

「半グレ、か」

 その言葉に、舎弟は頷いた。

 この頃、台頭してきたその組織は、極道ではない。

 元々は、暴走族や不良集団といった、アウトローに属していた若者たちが徒党を組み、組織化して狂暴化した集団の総称だ。

 中国残留孤児の二世、三世、それに外国人が混じった集団も、半グレに属する。

 あいにくと、この狂暴な集団は暴力団ヤクザではない。

 やってることは極道よりエグイ面もあるのに、一般人の仮面とヤクザを上手いこと使い分けているせいで『暴対法』の適用外になってしまう。

 本職ヤクザとしては何とも不公平な気もするが、一応奴らは一般人・・・であるので、こちらが手を出した場合、しょっ引かれるのは半グレではなくヤクザの方になってしまうのだ。

 そのせいで、十対一の状況での傷害事件であったのに、たまたま向こうに重傷患者が出たということで、正当防衛は認められずこちらの方が厳しく罰せられてしまった。

 男は、結局二年も刑務所へ入る事になったのだ。

……執行猶予中の騒動だっただけに実刑をくらってしまった。全く、不公平な話だ。

「――あいつは、今どうしている? 」

「あいつ、ですか? 」

 舎弟が訊き返すと、咳ばらいをしながら男は言い直す。

「御堂聖だ」

「ああ、御堂さんですか。天黄の持ち会社だった芸能事務所の社長に就いて、映画にドラマにCMと、上手いことやってますよ」

「はぁ!? 」

 最後に会ったときは、たしか――――

「青菱の若頭は、どうした? 」
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