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だから、どうにかして力になりたいのに。
その為に、芸能事務所の社長を続けているのに。
切なく溜め息をつき、タバコの灰を落とす。
(オレは――――お前のために何もかも捨てて変えたんだ)
正弘という、心から慕った男と共に歩むハズだった、極道としての未来を捨て、身体とプライドを犠牲にして数限りない男に抱かれた。
一度に五人相手に犯された時もある。
それでも、可愛い人形のように大人しくしていれば、幾らかマシな扱いもされたのだろうが、如何せん生来の気性は変えられず、哀願の言葉一つ口にしないで耐え続ける聖を屈服させようと、様々な責め苦が科せられた。
あれだけの目に遭いながら、よくもまぁ気が狂わなかったと我ながら思う。
やがて、聖の味の評判を聞きつけた青菱の若頭に目を付けられ、囲われた。
生き地獄とは、あのような事を言うのではなかろうか?
毎日のように意識を失うまで犯され、目覚めてもなお犯された。
顔以外の全身を殴られ、何度か骨折もした。
せめて、聖がもう少し要領のいい性格であったなら――――少しは優しく愛されたのだろうか?
聖には分からない。
そもそも、愛されるという事が、どういうことなのかが分からない。
正弘とは――あの一回だけだ。
捕らえられクスリを打たれ、その影響でおかしくなっていた聖を、正弘は丁寧に慰めてくれた。
あれは――確かに、愛だったのかもしれない。
しかし、やはり違う気もする。
聖にとって正弘は、今でも、敬愛する極道であり父親のようなものだ。
決して、恋人ではない。
また、それは正弘の方も同じであるようだ。
聖の事を愛しているが、それは恋人とかそういった生々しいものではなく、息子か孫に対する愛情に近い。
ゆったりと笑いながら、一緒に縁側に座って、茶を飲むような感覚だ。
その、可愛い孫が、極道の掟によって地獄を味わわされている――正弘にとっても、心中穏やかだったハズがない。
それまでは上野の地回りで満足し、組を次の代へ譲ろうとしていた男が、奮起して、己の勢力を広げようと本腰を入れた。
今はまだ青菱の傘下だが、いづれは対等になるだろう。
多分、それは、極道としての野望に火が付いたのではなく、聖の為だろう。
(親分――オレの為に、気楽な隠居生活が遠のいちまって悪いな……)
物思いにふけっていると、PPP…と、携帯電話が鳴った。
ハッと顔を上げ、着信に目を落とし――――聖は吐息をもらす。
着信の相手は、青菱史郎だ。
待ち焦がれたユウではない。
聖が、ずっと愛している子供ではない。
「――真壁。今夜は、このまま車を代官山に回せ」
「え? ご自宅じゃあないんですか? 」
「ああ……」
なぜだか、今夜は惨く抱かれたい。
何も考えられないくらいに、ただ残酷に犯されたい。
そう思い、聖は一粒の涙をこぼした。
その為に、芸能事務所の社長を続けているのに。
切なく溜め息をつき、タバコの灰を落とす。
(オレは――――お前のために何もかも捨てて変えたんだ)
正弘という、心から慕った男と共に歩むハズだった、極道としての未来を捨て、身体とプライドを犠牲にして数限りない男に抱かれた。
一度に五人相手に犯された時もある。
それでも、可愛い人形のように大人しくしていれば、幾らかマシな扱いもされたのだろうが、如何せん生来の気性は変えられず、哀願の言葉一つ口にしないで耐え続ける聖を屈服させようと、様々な責め苦が科せられた。
あれだけの目に遭いながら、よくもまぁ気が狂わなかったと我ながら思う。
やがて、聖の味の評判を聞きつけた青菱の若頭に目を付けられ、囲われた。
生き地獄とは、あのような事を言うのではなかろうか?
毎日のように意識を失うまで犯され、目覚めてもなお犯された。
顔以外の全身を殴られ、何度か骨折もした。
せめて、聖がもう少し要領のいい性格であったなら――――少しは優しく愛されたのだろうか?
聖には分からない。
そもそも、愛されるという事が、どういうことなのかが分からない。
正弘とは――あの一回だけだ。
捕らえられクスリを打たれ、その影響でおかしくなっていた聖を、正弘は丁寧に慰めてくれた。
あれは――確かに、愛だったのかもしれない。
しかし、やはり違う気もする。
聖にとって正弘は、今でも、敬愛する極道であり父親のようなものだ。
決して、恋人ではない。
また、それは正弘の方も同じであるようだ。
聖の事を愛しているが、それは恋人とかそういった生々しいものではなく、息子か孫に対する愛情に近い。
ゆったりと笑いながら、一緒に縁側に座って、茶を飲むような感覚だ。
その、可愛い孫が、極道の掟によって地獄を味わわされている――正弘にとっても、心中穏やかだったハズがない。
それまでは上野の地回りで満足し、組を次の代へ譲ろうとしていた男が、奮起して、己の勢力を広げようと本腰を入れた。
今はまだ青菱の傘下だが、いづれは対等になるだろう。
多分、それは、極道としての野望に火が付いたのではなく、聖の為だろう。
(親分――オレの為に、気楽な隠居生活が遠のいちまって悪いな……)
物思いにふけっていると、PPP…と、携帯電話が鳴った。
ハッと顔を上げ、着信に目を落とし――――聖は吐息をもらす。
着信の相手は、青菱史郎だ。
待ち焦がれたユウではない。
聖が、ずっと愛している子供ではない。
「――真壁。今夜は、このまま車を代官山に回せ」
「え? ご自宅じゃあないんですか? 」
「ああ……」
なぜだか、今夜は惨く抱かれたい。
何も考えられないくらいに、ただ残酷に犯されたい。
そう思い、聖は一粒の涙をこぼした。
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