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「謎の男? 」
「今は、天黄がバックの、ジュピタープロダクションって芸能事務所の社長を務めているらしい。こっちも何かあるかと、暴対法を盾になんやかんやと理由を付けて何度かガサ入れした事もあったが、至極経営は真面目で突くところがないくらいにマトモなんだと。社名は変えているが、AVやグラビアも手掛けている――が、そこも、法に抵触しない程度で運営していて、業種のわりに健全なモンらしい」
「ふ~ん」
「だから、もしかして天黄に盃を返してカタギになったのか……と思いきや、相変わらず天黄が筆頭株主だし、あちこちの有力な親分衆とも、随分懇意にしているって噂もある」
「ほぉ」
「そうなると、やっぱりカタギじゃないよな~…まぁ、オレ達一課は専門外だが」
暴力団担当なら、四課ことマルボウが専門だ。
「――しかし、何だってそんな男がこんな場所にいるんだ? 」
男は、素直な疑問を口にした。
御堂は濃いサングラスをしているので表情はよく分からないが、どうもホームで誰かを待っているようだ。
携帯電話を手にしながら、そわそわして、落ち着きがない。
男は気になり、数時間前からこの場所で待機していた所轄の刑事を呼び止めた。
「君、あそこのサングラスの男が、いつからここにいるか分かるか? 」
「ああ、はい。三時間前からですね。こっちも気になって一度声をかけたんです」
「三時間も――」
「何でも、事務所でスカウトした人材が今日上京してくる予定になっているからだと。確認してみたところ、とくに異常はありませんでしたが――どうかしましたか? 」
「……いや」
御堂聖は、暴力団の構成員の可能性がある。
その御堂が、黒龍の関係者がやって来るこのホームにいるのには、何か理由があるのだろうか?
(しかし、何かそれとも様子が違う気がするな……)
御堂は、まるで恋人でも待ち焦がれているようだ。
男には、そう見える。
小さいが、花束まで持っているようだ。
(こっちとは、完全に別件みたいだな。むさい男を待っているようには、とても見えん)
しかし、男の相棒の方が先走った。
「よし、先手をうっておくか! 」
「は!? 」
「あのホームの男、天黄組の関係者だ。身柄を確保しろ」
その言葉に、男は慌てて声を上げる。
「おいっ! 達郎、それはダメだ! 」
だが、遅かった。
石井達郎警部補の指示はすぐに伝達され、御堂の両脇はすぐに警官にかためられる。
御堂のボディーガードらしき若者がそれに抗おうとしたが、御堂本人が制止したらしく、二人は大人しく連行されていく。
それを見ながら、男は――綾瀬塔矢警視は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「今は、天黄がバックの、ジュピタープロダクションって芸能事務所の社長を務めているらしい。こっちも何かあるかと、暴対法を盾になんやかんやと理由を付けて何度かガサ入れした事もあったが、至極経営は真面目で突くところがないくらいにマトモなんだと。社名は変えているが、AVやグラビアも手掛けている――が、そこも、法に抵触しない程度で運営していて、業種のわりに健全なモンらしい」
「ふ~ん」
「だから、もしかして天黄に盃を返してカタギになったのか……と思いきや、相変わらず天黄が筆頭株主だし、あちこちの有力な親分衆とも、随分懇意にしているって噂もある」
「ほぉ」
「そうなると、やっぱりカタギじゃないよな~…まぁ、オレ達一課は専門外だが」
暴力団担当なら、四課ことマルボウが専門だ。
「――しかし、何だってそんな男がこんな場所にいるんだ? 」
男は、素直な疑問を口にした。
御堂は濃いサングラスをしているので表情はよく分からないが、どうもホームで誰かを待っているようだ。
携帯電話を手にしながら、そわそわして、落ち着きがない。
男は気になり、数時間前からこの場所で待機していた所轄の刑事を呼び止めた。
「君、あそこのサングラスの男が、いつからここにいるか分かるか? 」
「ああ、はい。三時間前からですね。こっちも気になって一度声をかけたんです」
「三時間も――」
「何でも、事務所でスカウトした人材が今日上京してくる予定になっているからだと。確認してみたところ、とくに異常はありませんでしたが――どうかしましたか? 」
「……いや」
御堂聖は、暴力団の構成員の可能性がある。
その御堂が、黒龍の関係者がやって来るこのホームにいるのには、何か理由があるのだろうか?
(しかし、何かそれとも様子が違う気がするな……)
御堂は、まるで恋人でも待ち焦がれているようだ。
男には、そう見える。
小さいが、花束まで持っているようだ。
(こっちとは、完全に別件みたいだな。むさい男を待っているようには、とても見えん)
しかし、男の相棒の方が先走った。
「よし、先手をうっておくか! 」
「は!? 」
「あのホームの男、天黄組の関係者だ。身柄を確保しろ」
その言葉に、男は慌てて声を上げる。
「おいっ! 達郎、それはダメだ! 」
だが、遅かった。
石井達郎警部補の指示はすぐに伝達され、御堂の両脇はすぐに警官にかためられる。
御堂のボディーガードらしき若者がそれに抗おうとしたが、御堂本人が制止したらしく、二人は大人しく連行されていく。
それを見ながら、男は――綾瀬塔矢警視は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
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