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最終章

最終章-14

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 そのセリフは、衝撃的だった。
 ジンの顔色が目に見えて変わる。

「君は……自分自身の生も、ここで終わって良いと本気で――」
「ええ、そうよ。何の未練もないわ」

 本当に一切の迷いもなく、リリスはそう答えた。
 そうして、静かに目を瞑る。

 今まさに、自分の身体を乗っ取ろうとしている相手を前にして、これは余りにも無防備だ。

 だがリリスは、これ以上の栄華を極め得る可能性を前にしても、

「――あなたには、感謝しかないわ。私の復讐を叶えるために努力してくれたのは事実だもの」
「……だから、代償として自分自身の肉体を差し出す事に抵抗は無いと?」

 震える声で問うジンに、リリスは応える。

「その通りよ。この先の『リリス』の生き方は、あなたの自由にしたらいいわ」
「本気かよ……」

 呆気に取られたような声にプッと吹き出しながら、リリスは何かを思い出したように口を開いた。

「あなたに、頼みがあるの」
「――頼み?」

 威勢のいい事を言っていたが、やはり怖気づいて来たかと若干調子を取り戻しながら、ジンは冷笑を浮かべる。

「ハハハ、いいだろう、言ってごらん」
「アッシュとユリには、お願いだから酷い事はしないでほしいの。彼等には一生困らない分のお金を渡して、故郷に帰るよう暇を出してあげて。それが、唯一の頼みよ」

「――――アッシュと、ユリ? 唯一の頼みがそれか……」

 これはとんだ誤算だ。
 この期に及んで、まだ他人の身の上を心配するとは。
 このお姫様は、本当に自分自身には未練がないらしい。

 それこそ、ジン唯一の楽しみだった阿鼻叫喚は、ここに来て全く発生しないようだ。

 飽きる程の生を貪って来たが、こんなこと現象は初めてだ!
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