彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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後日談

-14

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「聖……」

 愁いを帯びた眼差しを受け、慰めるように、史郎はその瞼へと口付けを落とす。
 瞼から頬、そして再び唇へと移動しながら、大きな手の平を使って柔らかくて弾力のあるその肉体を揉み上げ、撫でまわす。
 すると、聖だけが醸し出す、獣を酔わせる芳醇な華の匂いが立ち昇った。

 鼻腔をくすぐる芳しい香りにウットリしながら、己の身体を、その合間へと巧みに滑り込ませる。

「史郎っ」
「うんと、イイ気持ちにさせてやる」

 ニヤリと笑ってそう宣言すると同時に、大きく左右へと白い脚を割り開き、ゆっくりと己の雄芯を挿入させる。

「う――あぁ……」

 本来なら、受け入れる筈の無い箇所への異物を感じ、聖の呻くような声が漏れる。
 その切なく甘い声に、脳髄がマヒするようだ。

 油断をすると正気を失いそうになり、こっちはいつも、暴走しそうになるのを堪えるので必死になる。

 史郎をこれ程までに翻弄する人間など、聖以外には思いつかない。
 声も、汗も、涙も、この肉体全てが、猛毒に違いない。

(カタギで生きて行くと決心した聖の為にも、潔く身を引こうとした時もあったんだがな)

 フッと、その時の事を思い出し、史郎は苦く笑う。
 聖の代わりになりそうなオンナを捜して、手当たり次第に当たってみたが。
 誰もかれもが聖の足元にも及ばず、物は試しと呼び寄せた男娼には食指どころか嫌悪感しか湧かなかった。

 そうして、散々迷って悩んだ末に『オレは二度と、聖を諦めるなんて無駄な事は考えない』という答えを出した。

 だが、聖はカタギだ。

 昔は無理やり手中に収めようと足掻いたが、それでは、真っ当に生きようとしている聖に嫌われるだけだ。
 極道者との関係など、聖にとっては百害あって一利無しなのだから。

 それならば――――と、史郎は違う答えに行きついた。
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