彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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後日談

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   ◇

「……すみません、会長。客が来てますが」
「客? 後にしろ」

 配られたカードから目線を動かさず、青菱史郎はにべもなく断る。
 ここは、船上カジノだ。
 当然だが、日本ではカジノは非合法なギャンブルだ。

 しかし、抜け穴はあるもので。

 日本船籍ではない外国船籍で、日本沿岸から12海里離れた公海上であれば、カジノは違法ではなく合法なのである。

 ちなみに、船の名前は『Blue water chestnut』

 ナモ公国船籍ではあるが、英名を和訳にすると『青菱』である事から……まぁ、お察しの通りだ。
 そして、現在船は港に停泊中であるのだが、開始を待ちきれずに集まったメンバーで、船内では極秘にカジノを開催していた。
 外国船籍には容易に踏み込めない、日本のチェック機構を逆手にとっての青菱のシノギである。
 史郎はカジノの様子を観察するついでに、客に紛れて、ポーカーで遊んでいる最中であった。

 手札はエースが三枚揃っている。
 さて、このスリーカードでこのままチェックするか、それとも――

「会長」

 そわそわしながら、舎弟が耳打ちして来た。

「御堂聖です」

 その名を聞くや否や、史郎はガタっと立ち上がった。
 そうして、手持ちの札を未練もなくテーブルへと放り投げる。

「Hey!Are you willing to give up the game?勝負を放棄する気か?
It was a good card, but it's a waste良いカードだったのに勿体ない

 そんな声が掛けられたが、一顧だにせず史郎は立ち去る。
 彼にとって、一番熱くさせてくれるゲームは、ポーカーではないから。
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