彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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後日談

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「何だと?」

 真壁が、碇にそんな事を?
 それは初耳だ。
 聖は柳眉をキュッと吊り上げると、自分よりだいぶ上方にある碇の顔を睨みつけた。

「詳しく話せ」
「詳しくって言われてもな――」

 結局その関川は、碇の放った男達が拉致する前に、襲撃に遭遇して凶刃に倒れたのだ。

 それも、完全に自業自得で。

 汚いやり口で幾人も死に追いやった関川の過去が暴露され、むしろ現在では加害者側に同情の声が寄せられているらしい。
 義賊だと、称賛の声も上がっているようだ。
 減刑を求める署名や嘆願書も、続々と届いているらしい。

 今後の流れは分からないが、裁判員裁判となれば、確実に減刑が見込まれるだろう――と言うのが、碇の片腕として働いている赤川の見立てだ。

 赤川は弁護士資格も持っているので、その見立てに間違いは無いだろう。

「オレが気になっているのは」

 と、碇は続ける。

「手下たちが到着するより先に、一般人のド素人が関川を刺した。この話はここで終わりだが、もしかして真壁はオレ以外にも情報を流して……だからあんな顛末になったのかと疑っていたが」

たが・・?」

「あの真壁が、そんな両天秤に掛けるような真似をするかなと思ってよ。オレに電話をして来たときは……あいつは自分で関川を葬ろうとしていたようだった。そのくらいの気合があった」

 しかしその結果は、大きく違った。

 何だかんだ言っても、つまるところ真壁は自分の手を汚すことなく済んだし、肝心の聖も全くの無事だ。

 この顛末は、まさに万々歳だろう。
 碇のセリフに、聖は微かに頷いた。

「そう、だな……あの人も・・・・、これ以上罪を重ねる事も無かったわけだし」
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