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最終章
最終章-4
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電話を終え、急いで車へ駆け付けた真壁に、既に乗車していた聖はそう問いかける。
「ツイン・ロードから折り返して電話が来たと言って外していたが……それ以外に、何かして来たんじゃないのか?」
「な――何の事でしょうか?」
「妙に長かった」
「すみません。今、お車出します」
誤魔化すように笑うと、真壁は車をマンション駐車場から発進させた。
ちなみに今日は、金曜日の朝9時だ。
都内の、聖の自宅マンションからの、この時間帯は……。
「やはり渋滞ですね。ツイン・ロードまで、少し掛かりそうです」
「仕方がない……まぁ、その間に関川も揃うだろうが……」
(ならば、近藤さんの方で、ヤツを捕らえる時間的余裕があるってことだな)
内心ホッとしつつ、平静を装って「面子が全員そろったところで、我々が登場ということになりそうですね」と言葉を返す。
「そういえば、関川の顔、探偵からの報告で初めて知りましたが……まるで個性のない人畜無害の、普通のどこにでもいるようなサラリーマン顔でしたね。案外ああいう面のヤツが、ヤクザっぽくなくて人の油断を誘うんですかね」
「……」
「本当に、今回も探偵にはお世話になりました。仕事が早くて助かりましたね。報酬、ちょっと多めに付けておきましょうか?」
「真壁」
「はい?」
「お前は、やはり何か隠しているな」
「えぇ!? な、何の事――」
「とぼけるな」
この緊張している筈の場面で、妙に饒舌なのは明らかに不自然だ。
自らやましい事があると、放言しているようなものである。
「お前は、多生と違って……嘘が下手過ぎる」
聖はそう言い捨てると、後部座席のドアをガチャと開けた。
「聖さん!」
「ツイン・ロードから折り返して電話が来たと言って外していたが……それ以外に、何かして来たんじゃないのか?」
「な――何の事でしょうか?」
「妙に長かった」
「すみません。今、お車出します」
誤魔化すように笑うと、真壁は車をマンション駐車場から発進させた。
ちなみに今日は、金曜日の朝9時だ。
都内の、聖の自宅マンションからの、この時間帯は……。
「やはり渋滞ですね。ツイン・ロードまで、少し掛かりそうです」
「仕方がない……まぁ、その間に関川も揃うだろうが……」
(ならば、近藤さんの方で、ヤツを捕らえる時間的余裕があるってことだな)
内心ホッとしつつ、平静を装って「面子が全員そろったところで、我々が登場ということになりそうですね」と言葉を返す。
「そういえば、関川の顔、探偵からの報告で初めて知りましたが……まるで個性のない人畜無害の、普通のどこにでもいるようなサラリーマン顔でしたね。案外ああいう面のヤツが、ヤクザっぽくなくて人の油断を誘うんですかね」
「……」
「本当に、今回も探偵にはお世話になりました。仕事が早くて助かりましたね。報酬、ちょっと多めに付けておきましょうか?」
「真壁」
「はい?」
「お前は、やはり何か隠しているな」
「えぇ!? な、何の事――」
「とぼけるな」
この緊張している筈の場面で、妙に饒舌なのは明らかに不自然だ。
自らやましい事があると、放言しているようなものである。
「お前は、多生と違って……嘘が下手過ぎる」
聖はそう言い捨てると、後部座席のドアをガチャと開けた。
「聖さん!」
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