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最終章
最終章-3
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二階堂がそう言うと、対面に座っていたジャージがウンザリとした様子で口を開いた。
「だから、舞台化なんて面倒な事どうでもいいから、今まで通りゲームの企画・開発・配信をしようって、俺、前から言ってますよね?」
すると、もう一人も同調するように頷く。
「オレも同意見です。大体、次回のゲームはハードから変えるんですよ? いくらヒットしても、今の世の中簡単に直ぐ飽きられちまう。どんどん新しい方へシフトチェンジするべきだ。ウチはコプコンやサイバードリームなんて大手でもないし、2.5舞台なんて畑違いの事に労力を割くなんて馬鹿げている」
この期に及んで本音をこぼす幹部達に、二階堂は苦虫を嚙み潰したような顔になる。
――――本当は、二階堂自身だってそう思っていた。
しかし、学生時代に、仲違いが原因で一番最初に立ち上げた会社を倒産させてしまい、途方に暮れていた二階堂へ資金面で協力してくれた恩人である関川の意見は、どうしても無視できなかったのだ。
「……お前らの言いたい事は分かったよ。関川さんが来たら、その件も含め改めて相談しよう。正直言って、ツイン・ロードの内情は火の車だ。舞台化を進めても、それで会社が延命できるかどうかなんて、ハッキリ言って博打みたいだしな。……関川さんは、舞台化の話が本格化すれば銀行から追加融資を受けられるって言っていたけど――」
だが、当の銀行からは、そんな話は一切出ていないと不審がられてしまった。
これは関川の話と、随分食い違っている。
今まで、関川を信用しきってここまで来たが、何かがオカシイと、二階堂はさすがに不安を感じ始めていた。
(ジュピタープロダクションと、関川さんと、もう一度よく話し合おう。僕だって社長なんだから)
その自覚が、もっと早ければ。
ツイン・ロードが順調に業績を伸ばして、企業として成長する事もあっただろうに。
そう後悔するのは、もう少し先の話である。
◇
「真壁、何かオレに隠してないか?」
「だから、舞台化なんて面倒な事どうでもいいから、今まで通りゲームの企画・開発・配信をしようって、俺、前から言ってますよね?」
すると、もう一人も同調するように頷く。
「オレも同意見です。大体、次回のゲームはハードから変えるんですよ? いくらヒットしても、今の世の中簡単に直ぐ飽きられちまう。どんどん新しい方へシフトチェンジするべきだ。ウチはコプコンやサイバードリームなんて大手でもないし、2.5舞台なんて畑違いの事に労力を割くなんて馬鹿げている」
この期に及んで本音をこぼす幹部達に、二階堂は苦虫を嚙み潰したような顔になる。
――――本当は、二階堂自身だってそう思っていた。
しかし、学生時代に、仲違いが原因で一番最初に立ち上げた会社を倒産させてしまい、途方に暮れていた二階堂へ資金面で協力してくれた恩人である関川の意見は、どうしても無視できなかったのだ。
「……お前らの言いたい事は分かったよ。関川さんが来たら、その件も含め改めて相談しよう。正直言って、ツイン・ロードの内情は火の車だ。舞台化を進めても、それで会社が延命できるかどうかなんて、ハッキリ言って博打みたいだしな。……関川さんは、舞台化の話が本格化すれば銀行から追加融資を受けられるって言っていたけど――」
だが、当の銀行からは、そんな話は一切出ていないと不審がられてしまった。
これは関川の話と、随分食い違っている。
今まで、関川を信用しきってここまで来たが、何かがオカシイと、二階堂はさすがに不安を感じ始めていた。
(ジュピタープロダクションと、関川さんと、もう一度よく話し合おう。僕だって社長なんだから)
その自覚が、もっと早ければ。
ツイン・ロードが順調に業績を伸ばして、企業として成長する事もあっただろうに。
そう後悔するのは、もう少し先の話である。
◇
「真壁、何かオレに隠してないか?」
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