彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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   ◇

 予定の時刻より早く自宅マンションへ現れた真壁を迎え入れながら、聖は驚いたように首を傾げる。

「どうした? いつもなら、時間には正確なお前が……まぁ、支度は出来ていたから丁度いいが」
「――聖さん、聞いて欲しい事が……」
「それは後だ。先にコッチの話を片付ける。オレはこれから関川というチンピラを捜し出して、すぐに指定する場所へ連行してくれと青菱へ連絡を入れるつもりだ」
「あのっ!」
「反社とは可能な限り接触したくないが、この際そんな事も言ってられない。オレの方で、野郎関川にそれなりの落とし前を付けさせる。あの人笊川多生には、これ以上の罪は犯させない」
「聖さん!」
「?」

 真壁の顔が青ざめている事に気付き、聖は察した。

「――――お前が言いたいのは、その笊川多生の事か」

「そうです。本当に、もうヤツに係わってはダメです! 警察の手が直ぐそこまで迫っていると、探偵から報告がありました」

『しくじって、ヤツの手下の方を殺しっちまった件もマズい事になっている。オレにはもう、時間が無い』

 そう当の本人が言っていた事を思い出し、聖の顔は強張る。

(そうか、だからあんたには時間が無いのか)

 無言になる聖に縋るように、真壁は必死の形相で言い募る。

「聖さんが、昔世話になった人だというのは分かりましたが、だからといってこのまま此方が被害を被る理由にはなりません! あなたはユウさんの為にカタギになったんでしょう? 犯人隠避で逮捕なんかになったら、せっかく今まで築き上げた地位も信頼も失ってしまうんですよ!? あいつを警察に突き出して、スッパリと関係を切るべきです!」

「そんな事は……出来ない……」
「聖さん!!」
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