彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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「本当に、危なかった。オレと社長が同席していたからストップ出来たが、これが他の役員だったら――考えただけでもゾッとする。とにかく、今回も無理を言って申し訳なかったです。だいぶ急かしたにも拘らず、これだけの報告書をまとめて頂きありがとうございます。これから時間をかけて、こっちのファイルの方も内容を確認します」

 深々と頭を下げる真壁に、探偵は「気にしないで下さい」と手を振った。

「なに、これが当方の仕事ですから。それに、ジュピタープロダクションは金払いが良いのでこっちも助かってますよ。今後も、どうぞ綾瀬探偵事務所を御贔屓に」

 人懐こい笑みを浮かべる探偵に、真壁は、新たな疑念を口にした。

「それでは――もしも知っていたらで良いんですが……」
「はい?」
「ツイン・ロードの代表は、本当にこんな悪巧みをたった一人で考えたんでしょうか?」
「それは違うようですね」

 探偵はあっさり告げると、報告書とは別に分けたファイルに指先を当てた。

「別件として整理しましたが、ツイン・ロードにコンサルタントとして入り込んでいる男の入れ知恵で、二階堂は今回の計画を思い付いたようです。しかしこのコンサルタント、調べてみたところどうもきな臭い人物のようで――」

 男らしい形のいい眉を歪めると、探偵は『証拠はないですが』と前置きして口を開いた。

「コンサルタントの男は、関川という人物です。特に珍しい名前でもないので本当に偶然かもしれないですが、二階堂が現在の会社を立ち上げる際に、資金を出資した人物と同じ名前なんですよ」

 二人の関川が同一人物なら、株主=コンサルタントという事になる。
 ならば尚更、二階堂はコンサルタントの意見に左右されるだろう。

「そして二階堂ですが、学生時代に起業したというゲーム会社は、仲間との仲違いが原因で既に解散してました。ツイン・ロードは、関川の出資でその後に作ったようですね」

「そうだったんですか……」

 確かにきな臭いが、格別妙な話ではない。
 それでは、その関川・・は特に重要人物として考えなくても良いのでは?
 そう思った真壁に、探偵は静かに囁いた。

他人カモに会社を起業させて、それを利用して潰しては資金を回収し、どんどん転がしてわらしべ長者のように大きくしているようだ」
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