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「……あんたの悩み事って、復讐のことか?」
「っ!」
聖のセリフに、多生は目を見開く。
だが、否定の言葉は出てこない。
それはもう、認めたようなものだった。
「――――聞いたよ、咲夜って人の事。あんた、その人に惚れてたんだろう?」
「……聖」
「バカだな。的にかける相手をしくじっちまうなんて。こんな事が、いつまでもオレの耳に入らないと思うのか?」
そこまで口にすると、鼻の奥がツンとしてきた。
泣きたくなるのを我慢するなど、そんなしおらしい真似は我ながらガラじゃないが。
だが聖は、無理やり微笑みを浮かべると、多生の顔を覗き見た。
「な、復讐なんて、止めとけよ。そんな事をしたって、死んだ奴は戻って来ないんだ」
「……」
「もちろん、野郎に落とし前はキッチリつけさせる。警察に突き出したら、出てくる頃にはヨボヨボのジジィだぜ。ザマーミロって、それで納得してくれないか?」
すると多生は、苦く笑った。
「今まで悪かったな、聖」
「? 何を謝ることがあるんだ――」
「お前を利用しようかと思ったが、やっぱりそれは止めておくよ。ここから先は、オレ一人でやってみる」
「ターさん!」
声を荒げる聖であるが、ふと気づいた。
『利用』とは、何の事だろう。
「あんた、オレに何をやらせようと思ってたんだ?」
「それは……いや、もう関係ない事だ」
そう一言だけいうと、多生は椅子からのそりと身を起こした。
どうやら、このマンションから出て行くつもりのようだ。
「多生! ちゃんと全部を話せよ! こっちは、どんだけあんたの事が――」
「holyが、オレに惚れてくれているのを知っていたのに踏みにじる所だった。ゴメンよ」
「っ!」
聖のセリフに、多生は目を見開く。
だが、否定の言葉は出てこない。
それはもう、認めたようなものだった。
「――――聞いたよ、咲夜って人の事。あんた、その人に惚れてたんだろう?」
「……聖」
「バカだな。的にかける相手をしくじっちまうなんて。こんな事が、いつまでもオレの耳に入らないと思うのか?」
そこまで口にすると、鼻の奥がツンとしてきた。
泣きたくなるのを我慢するなど、そんなしおらしい真似は我ながらガラじゃないが。
だが聖は、無理やり微笑みを浮かべると、多生の顔を覗き見た。
「な、復讐なんて、止めとけよ。そんな事をしたって、死んだ奴は戻って来ないんだ」
「……」
「もちろん、野郎に落とし前はキッチリつけさせる。警察に突き出したら、出てくる頃にはヨボヨボのジジィだぜ。ザマーミロって、それで納得してくれないか?」
すると多生は、苦く笑った。
「今まで悪かったな、聖」
「? 何を謝ることがあるんだ――」
「お前を利用しようかと思ったが、やっぱりそれは止めておくよ。ここから先は、オレ一人でやってみる」
「ターさん!」
声を荒げる聖であるが、ふと気づいた。
『利用』とは、何の事だろう。
「あんた、オレに何をやらせようと思ってたんだ?」
「それは……いや、もう関係ない事だ」
そう一言だけいうと、多生は椅子からのそりと身を起こした。
どうやら、このマンションから出て行くつもりのようだ。
「多生! ちゃんと全部を話せよ! こっちは、どんだけあんたの事が――」
「holyが、オレに惚れてくれているのを知っていたのに踏みにじる所だった。ゴメンよ」
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