彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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6 Incident

6-10

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 真壁は、訝しそうな顔になってツイン・ロードの役員たちを見遣る。

「ツイン・ロードが設立したのは、今から五年前です。しかし先程、学生時代に起業したと言っていましたが、それが本当なら時期が微妙に合いません」

「そうか――」

 聖は、資料データを頭に思い浮かべた。

「……資本金は2000万、連結従業員は500人、単体は20人。主要取引銀行は三知銀行で、一般社団法人日本オンラインゲーム協会にも所属している。これだけ見ると怪しいところはないが」

 新進気鋭のクリエイター集団という華々しい感はあるが、どうも腑に落ちない。
 この二階堂もそうだが、他の役員も、お世辞にも会社の顔にしては頼りなさすぎる。
 これでは、海千山千を乗り越えて来た、ジュピタープロの老獪な連中にあっという間に付け込まれそうだ。
 亘理と名取の、脳内でソロバンをはじく音まで聞こえて来そうではないか。

「こんなので、今まで会社を運営して来たとは信じられんな」

 それに、時期が合わない・・・・・・・という点が、何かあるような気がする。
 真壁はメモを取り出しながら、知っている情報を改めて口にした。

「ツイン・ロードは、ゲームの企画・開発・配信を柱としていますが、今回は2.5次元舞台化に関しての運営をジュピタープロに委託する契約ですが……」
「いきなりこんな畑違いの事に手を出すのは、先程言っていたコンサルタントの意見が強いらしい。やはり、その辺りが気になるな」
「え? コンサルティングを会社に入れていたんですか?」
「ああ」

 少し考え、聖は真壁へ指示を出した。

「二階堂が、ツイン・ロードを設立するを調べてくれ。探偵を遣ってもいい」
「了解しました」

 真壁が返事をしたのと同じタイミングで、酒が入り少々羽目を外したらしい二階堂が、笑いながら声を掛けてきた。

「ちょっと、ちょっとぉ、そこ! 二人で何を喋ってるんですか~イヤらしいなぁ」

 困ったように微笑むママに頷くと、聖はゆっくりと立ち上がった。

「二階堂さん、そろそろ河岸かしを変えましょうか?」
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