彼が恋した華の名は:4

亜衣藍

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6 Incident

6-9

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 さすがにそんな態度を取られては、こちらとしては腹立たしく感じるところであるが。

 しかし逆に、かえってそこ・・に付け込めるのではないかという、そんな計算が働く。

 ようするに、社会の常識も心得ていないようなこの程度の若造であれば、幾らでもこちらの都合が良いように、今後は容易く御せるのではないだろうかという損得勘定が刺激されるのだ。

 マネジメントのイニチアチブを取れれば、ジュピタープロダクションの利益は更に跳ね上がる。

 事実、ジュピタープロの役員として聖と共に同席していた亘理と名取は、これは実に旨いカモが向こうから飛び込んで来たぞと思ったらしく、ギラリと目を光らせた。
 二人は相好を崩しながら、自分達よりも一回り以上年下の若造に対して、早速愛想を振りまき始めた。

「それにしても、二階堂社長はお若いのに大したものですねぇ。大学で知り合った方々と、こんな立派な会社を興したと? なかなか出来る事じゃあないですよ」
「ははは、そうですかね?」
「ウチのバカ息子なんか、放蕩者で困ってますよ。二階堂さんの爪の垢でも、煎じて飲ませたいくらいです」

 分かり易いお世辞だが、二階堂は褒められて満更ではない様子だ。

 スーツとフリースの役員も「お二人も並みの人物ではない」などとお世辞を言われ、これまた誇らしげな顔になっている。

 友人同士で組んで大学在学中に起業した時のまま、今もまだ学生気分が抜けきっていないようだ。各々クリエーターとしての才能は確かにあるのだろうが、凡そ会社経営には向いていない気がする。

“いやはや、如何にも今時の人という印象ですね”と言えばそれまでだが。

 一人、聖だけは冷静に、その様子を検分していた。

――――いいや、二人か?

「聖さん、この連中少しおかしくないですか?」

 席に戻って来た真壁は、そう聖へ耳打ちして来た。

「会社は実在してますし、ゲーム舞台化の話も本物です。今回の企画の件に関しては、事前に裏も取ってますが……」
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