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5 harsh reality
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胡乱気な表情になる聖に、史郎は「まぁ、そう急ぐな」と宥める。
「さっきも言ったが、関川はかなりの外道だ。今もそうだが、昔はもっと非道なマネも平気で行っていたらしい。ま、オレがその事を知ったのはつい最近だが」
史郎は、青菱の頂点に君臨する男なだけに、逆に末端の情報まで耳に入ることは無い。
余程重要な内容でなければ、些末な情報は下部組織の段階で止まる。
関川の事を史郎が知ったのは、つい最近だというのは本当だろう。
「正直、関川なんて野郎どうでもいいが、多生の名前ならオレも知っていたからな」
「……で?」
「ヤツの身柄は今、神原組が匿っているんだが――――名指しして、多生が殺したとずっと騒いでいるらしい。その理由を問い詰めたところ、昔、多生から紹介されたオンナを散々弄んだ上にぶっ殺したのがヤツにバレちまって、それで報復されそうになっているとブチまけたようだ。つまり舎弟の斎藤は、多生の復讐に巻き込まれた哀れな犠牲者ってことだな」
確かに多生は、元々女衒を生業にしていた。
ならば、そこで関川との繋がりがあったとしても不思議ではないが。
「――――オンナを紹介ねぇ……それは、何年前の話だ?」
聖の疑問に、史郎は素っ気なく答えた。
「二十年前だ」
それはつまり、聖の前から突然多生が姿を消した時期と合致する。
あの時の多生の失踪が、ただの偶然ではなかったという事か?
「多生は――」
そう言い掛けた聖の唇は、強引に塞がれた。
「んぅっ!」
「多生多生多生、そればっかりだな、お前は! こっちもいい加減に聞き飽きたぜ」
苛立ちを込めた言い様に、聖は抗いながら言い返す。
「だって、仕方がないだろう! 関川って野郎が、身から出た錆で狙われるのはどうでもいいが、あの人が殺人犯になるのはだけは阻止しないとっ」
だがそのセリフは、再び中断された。
史郎が、聖の弱点を責めだした所為だ。
堪え切れないような、甘い声が聖の口から漏れ出す。
「さっきも言ったが、関川はかなりの外道だ。今もそうだが、昔はもっと非道なマネも平気で行っていたらしい。ま、オレがその事を知ったのはつい最近だが」
史郎は、青菱の頂点に君臨する男なだけに、逆に末端の情報まで耳に入ることは無い。
余程重要な内容でなければ、些末な情報は下部組織の段階で止まる。
関川の事を史郎が知ったのは、つい最近だというのは本当だろう。
「正直、関川なんて野郎どうでもいいが、多生の名前ならオレも知っていたからな」
「……で?」
「ヤツの身柄は今、神原組が匿っているんだが――――名指しして、多生が殺したとずっと騒いでいるらしい。その理由を問い詰めたところ、昔、多生から紹介されたオンナを散々弄んだ上にぶっ殺したのがヤツにバレちまって、それで報復されそうになっているとブチまけたようだ。つまり舎弟の斎藤は、多生の復讐に巻き込まれた哀れな犠牲者ってことだな」
確かに多生は、元々女衒を生業にしていた。
ならば、そこで関川との繋がりがあったとしても不思議ではないが。
「――――オンナを紹介ねぇ……それは、何年前の話だ?」
聖の疑問に、史郎は素っ気なく答えた。
「二十年前だ」
それはつまり、聖の前から突然多生が姿を消した時期と合致する。
あの時の多生の失踪が、ただの偶然ではなかったという事か?
「多生は――」
そう言い掛けた聖の唇は、強引に塞がれた。
「んぅっ!」
「多生多生多生、そればっかりだな、お前は! こっちもいい加減に聞き飽きたぜ」
苛立ちを込めた言い様に、聖は抗いながら言い返す。
「だって、仕方がないだろう! 関川って野郎が、身から出た錆で狙われるのはどうでもいいが、あの人が殺人犯になるのはだけは阻止しないとっ」
だがそのセリフは、再び中断された。
史郎が、聖の弱点を責めだした所為だ。
堪え切れないような、甘い声が聖の口から漏れ出す。
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