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――そう思い、史郎は慌てて手を放すが。
だが、逆にその手を掴まれて、史郎は驚いた。
(聖?)
まじまじと見つめたところ、聖がどこか艶っぽい雰囲気を醸しながら、史郎の手にキュッと指を絡めて来た。
「……若頭」
「な、なんだ?」
「そんな強い力で掴まれたら、また痣になっちまいます。この身体に、これ以上傷を増やすのは止めてくれませんか?」
「うっ」
確かに、毎回力加減を忘れて肩を強く押さえつけたり、腕や足を掴んだりするせいか、聖の全身には紫色の痣が浮いていた。
それが全て自分の行いの結果なのだと思うと、今更ながら後味が悪い気がして来る。
思うようにならない鬱憤を、聖相手に発散するのは我ながら間違っているという自覚はあるだけに、史郎もこれ以上強くは出れなくなった。
自然と、普段の獰猛さも霧散する。
ここで「帰る!」と言いたいところだが、それでは元の木阿弥だと多生からレクチャーを受けていた聖は、グッとそのセリフを我慢した。
(よし、こっからが正念場だぞ)
聖は気合を入れ直し、絡め捕った史郎の手を握ると、そのままそっと引き寄せた。
自分より一回り大きいこの男の身体を、突き飛ばしたり蹴り上げたりした事はあったが、このように誘うような行動を起こしたのは、これが初めてだ。
緊張したが、それは相手も同じだったらしい。
「ひ――聖っ!?」
裏返った声に、よっぽど驚いたのが伝わって来る。
全身を覆う筋肉までもが硬くなり、史郎は、聖以上に緊張しているのが分かった。
その背中へそっと手を這わせながら、聖は可能な限り優しい声音で囁く。
「若頭。オレばっかり裸ってのは、気恥ずかしいんですが」
「わ、分かった!」
史郎は、今度は怒りではなく、急激に滾ってきた情念に顔を赤くする。
だが、逆にその手を掴まれて、史郎は驚いた。
(聖?)
まじまじと見つめたところ、聖がどこか艶っぽい雰囲気を醸しながら、史郎の手にキュッと指を絡めて来た。
「……若頭」
「な、なんだ?」
「そんな強い力で掴まれたら、また痣になっちまいます。この身体に、これ以上傷を増やすのは止めてくれませんか?」
「うっ」
確かに、毎回力加減を忘れて肩を強く押さえつけたり、腕や足を掴んだりするせいか、聖の全身には紫色の痣が浮いていた。
それが全て自分の行いの結果なのだと思うと、今更ながら後味が悪い気がして来る。
思うようにならない鬱憤を、聖相手に発散するのは我ながら間違っているという自覚はあるだけに、史郎もこれ以上強くは出れなくなった。
自然と、普段の獰猛さも霧散する。
ここで「帰る!」と言いたいところだが、それでは元の木阿弥だと多生からレクチャーを受けていた聖は、グッとそのセリフを我慢した。
(よし、こっからが正念場だぞ)
聖は気合を入れ直し、絡め捕った史郎の手を握ると、そのままそっと引き寄せた。
自分より一回り大きいこの男の身体を、突き飛ばしたり蹴り上げたりした事はあったが、このように誘うような行動を起こしたのは、これが初めてだ。
緊張したが、それは相手も同じだったらしい。
「ひ――聖っ!?」
裏返った声に、よっぽど驚いたのが伝わって来る。
全身を覆う筋肉までもが硬くなり、史郎は、聖以上に緊張しているのが分かった。
その背中へそっと手を這わせながら、聖は可能な限り優しい声音で囁く。
「若頭。オレばっかり裸ってのは、気恥ずかしいんですが」
「わ、分かった!」
史郎は、今度は怒りではなく、急激に滾ってきた情念に顔を赤くする。
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