ヒネクレモノ

ヒネクレモノ

ヒネクレモノ

毎日なにを考えている？
そんなことばかり気になって、気になって仕方がない
でも、そんな本音は言っちゃダメ
だって、それじゃあコッチが本気みたいで、悔しいじゃない？
思わせぶりに匂わせて、ソッチから告白するのをずっと待っている
　コッチもそうとうヒネクレモノ
でも、ソッチはソッチで生意気だよ
時間はたくさんあるけれど、不安ばかりが降り積もる
だって、ソッチはけっこうモテるみたい
ねぇ、お願い
他の子を見るのはやめて、
喋るのもダメだよ？
コッチは意外と嫉妬深い
知らないでしょう？
思わせぶりに匂わせて、ソッチが折れるの待ってるんだ
だって、コッチから折れたら
それじゃあ、コッチが本気みたいで悔しいじゃない？
駆け引きして、
綱引きして、
だまし合って
生意気なソッチと、ヒネクレモノのコッチじゃあ
いつかどうなるか分かりゃあしない
ヒネクレモノのたわ言だと流さないで
不安で泣きそうになる時もあるんだ
でも、コッチもそうとうヒネクレモノ
ソッチはソッチで生意気だし
素直になんか、なれそうもない
ねぇ、だけど
他の子を見るのはやめて
喋るのもダメだよ？
ずっとコッチだけ見ていてほしい
ヒネクレモノのたわ言だけど
――――♪

　この歌が、インターネットの無料動画サイトに投稿された。
　それは、炎上騒ぎで一躍時の人になった、畠山ユウの新曲だった。

　それまでの得意のファルセットではなく、しっとりとギター一本で歌い上げる画面の中のユウは、艶やかで魅力的であった。

　零がセイレーンと讃えた美声はさらに磨きが掛かり、柔らかく陶然と耳に響いた。

　ユウが歌う様子は、自宅で一発撮りで撮影したらしいシンプルな映像で、それは華美なプロモーションビデオに慣れた観衆の目には逆に新鮮に映り、大変な話題になった。

　その口から紡ぎ出す美声は響き渡り、天上の音楽のようだった。

　炎上直後にアップされたその曲は、最初は炎上商法かと叩かれたが、それも、次第に潮目が変わる。
　彼の歌声に魅せられたファンの方が、次第に、バッシングする側よりもネットで大勢を占めるようになっていったのだ。

　さてさて、その後、年末に再び開催された【ミュージック・ヒット・ザ・ジャックポット】であるが――――。



　その場に、畠山ユウと、零たちTriangleが出演しかたどうかは、また別の話である。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　END