97 / 101
最終章
5
しおりを挟む
憧れて、手に入れたくて仕方がない。
愛しくて、欲しくて堪らない。
「だから、オレと付き合ってください! お願いします!」
真っすぐで、ストレートな告白だ。
何のひねりもない。
恋愛の駆け引きめいたこと一つもない、実にピュアな告白だ。
だから余計に……ユウの心に、響いた。
「……オレはアラサーなんだぞ?」
「そんなの知ってます!」
「お前はまだ十六の高校生じゃないか。それが、こんなおっさんつかまえて言うセリフじゃないぞ」
「おっさんなんてとんでもない! それに歳なんか関係ありません。あなたは世界一綺麗です! 好きです、愛しています! 一目惚れしました!」
ありったけの情熱を込めて、零は求婚するように告白する。
毒気を抜かれて、ユウは妙に気の抜けた声をもらした。
「……一目惚れって……いったい、いつから?」
「ゴーパラで、初共演した時からです。元々オレはあなたのファンでしたが、今はそれ以上です。ワンフレーズだけ歌うあなたの美しさに、一目で完全に虜になりました。あなたは、オレのセイレーンです」
セイレーンとは、美しい歌声で船人を惑わし魅了する、海界の蠱惑な魔物のことである。
その歌声の虜となったものは恍惚のまま、海の底へと引き込まれるという。
「セイレーンだって? うう……お前、絶対外国の血が強いな。他のみんなにも言われるだろう? 日本人は、そんなストレートにそういう告白は口にしないもんだぞ……」
聞いているこっちの方が恥ずかしくなる。
ユウは真っ赤になって、自分より年下だが、恐れを知らない濃いブルーの瞳を見た。
「それにセイレーンに心を奪われたら、死んでしまうんじゃなかったか?」
すると零は、いっそう強い光を瞳に点した。
「それこそ本望です。破滅しても死んでも、何がなんでも欲しいものは手に入れろというのがウチの家訓です」
「そんな……」
「本当です。オレの母方の先祖はバイキングです。船で初めて訪れた土地で見初めた美人を、次に湾へ着岸した時に連れ去って花嫁にしようとしたら、既に違う男に掠め取られていたって逸話があるんです。先祖は、それが心残りで死ぬまで後悔し続けたと――だから、惚れたなら相手が誰だろうと絶対に迷うなと、母から常々言われています」
それまでの正座の状態から姿勢を変え、片膝をつくと、零は恭しく言った。
「もう一度言います。あなたはオレのセイレーンだ。心を、魂を奪われました……愛しています」
そして彼は、右手を差し出した。
この手を取れば、それはOKの意味になる。
「……」
愛しくて、欲しくて堪らない。
「だから、オレと付き合ってください! お願いします!」
真っすぐで、ストレートな告白だ。
何のひねりもない。
恋愛の駆け引きめいたこと一つもない、実にピュアな告白だ。
だから余計に……ユウの心に、響いた。
「……オレはアラサーなんだぞ?」
「そんなの知ってます!」
「お前はまだ十六の高校生じゃないか。それが、こんなおっさんつかまえて言うセリフじゃないぞ」
「おっさんなんてとんでもない! それに歳なんか関係ありません。あなたは世界一綺麗です! 好きです、愛しています! 一目惚れしました!」
ありったけの情熱を込めて、零は求婚するように告白する。
毒気を抜かれて、ユウは妙に気の抜けた声をもらした。
「……一目惚れって……いったい、いつから?」
「ゴーパラで、初共演した時からです。元々オレはあなたのファンでしたが、今はそれ以上です。ワンフレーズだけ歌うあなたの美しさに、一目で完全に虜になりました。あなたは、オレのセイレーンです」
セイレーンとは、美しい歌声で船人を惑わし魅了する、海界の蠱惑な魔物のことである。
その歌声の虜となったものは恍惚のまま、海の底へと引き込まれるという。
「セイレーンだって? うう……お前、絶対外国の血が強いな。他のみんなにも言われるだろう? 日本人は、そんなストレートにそういう告白は口にしないもんだぞ……」
聞いているこっちの方が恥ずかしくなる。
ユウは真っ赤になって、自分より年下だが、恐れを知らない濃いブルーの瞳を見た。
「それにセイレーンに心を奪われたら、死んでしまうんじゃなかったか?」
すると零は、いっそう強い光を瞳に点した。
「それこそ本望です。破滅しても死んでも、何がなんでも欲しいものは手に入れろというのがウチの家訓です」
「そんな……」
「本当です。オレの母方の先祖はバイキングです。船で初めて訪れた土地で見初めた美人を、次に湾へ着岸した時に連れ去って花嫁にしようとしたら、既に違う男に掠め取られていたって逸話があるんです。先祖は、それが心残りで死ぬまで後悔し続けたと――だから、惚れたなら相手が誰だろうと絶対に迷うなと、母から常々言われています」
それまでの正座の状態から姿勢を変え、片膝をつくと、零は恭しく言った。
「もう一度言います。あなたはオレのセイレーンだ。心を、魂を奪われました……愛しています」
そして彼は、右手を差し出した。
この手を取れば、それはOKの意味になる。
「……」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ナラズモノ
亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。
(※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください)
芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。
そんな彼には、密かな夢があった――――。
【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
エンドルフィンと隠し事
元森
BL
男娼館『ディメント』で男娼として働いている室井好紀(むろい こうき)は小奇麗な顔立ちではあるが下手すぎて人気が低迷していた。
同伴として呼ばれた人気ナンバー2の男娼であるクミヤに冗談で『技術指導をしてほしい』と言ったら、頷かれてしまい…。好紀はクミヤの指導を密かに受けることになるが…?
人気ナンバー2のミステリアスな美形×人気は下位の明るい青年
「アドレナリンと感覚麻酔」のスピンオフですが、単独でも読めるお話となっております。
この作品はサイト(http://momimomi777.web.fc2.com/index.html)にも掲載しております。
※執着要素あり。鬼畜、痛い描写、嘔吐、性描写強めです。閲覧にはご注意ください。
【R指定BL】下剋上な関係を集めた短編集
あかさたな!
BL
◆いきなりオトナな内容に入るのでご注意ください◆
全話独立してます!
年下攻めや下剋上な関係の短編集です
【生徒会長になってた幼馴染による唇攻め】【弟からの指による快感で服従してしまった兄】【sub/dom世界の勇者と魔王】【VRゲームが進化した先にスライムに負ける受けがいてもいい】【脳イキさせる大学の後輩】【両片思いが実った】【むしろ胸を開発されてしまう話】【嫉妬を抑えれない幼いご主人様】【悪魔に執着してしまう腹黒神父様】【ただただ甘々なオメガバース世界のお話】【キス魔な先生を堪能する双子】
2022/02/15をもって、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーー
感想やリクエスト
いつもありがとうございます!
完結済みの短編集
【年下攻め/年上受け】
【溺愛攻め】
はプロフィールから読めます!
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる