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最終章
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憧れて、手に入れたくて仕方がない。
愛しくて、欲しくて堪らない。
「だから、オレと付き合ってください! お願いします!」
真っすぐで、ストレートな告白だ。
何のひねりもない。
恋愛の駆け引きめいたこと一つもない、実にピュアな告白だ。
だから余計に……ユウの心に、響いた。
「……オレはアラサーなんだぞ?」
「そんなの知ってます!」
「お前はまだ十六の高校生じゃないか。それが、こんなおっさんつかまえて言うセリフじゃないぞ」
「おっさんなんてとんでもない! それに歳なんか関係ありません。あなたは世界一綺麗です! 好きです、愛しています! 一目惚れしました!」
ありったけの情熱を込めて、零は求婚するように告白する。
毒気を抜かれて、ユウは妙に気の抜けた声をもらした。
「……一目惚れって……いったい、いつから?」
「ゴーパラで、初共演した時からです。元々オレはあなたのファンでしたが、今はそれ以上です。ワンフレーズだけ歌うあなたの美しさに、一目で完全に虜になりました。あなたは、オレのセイレーンです」
セイレーンとは、美しい歌声で船人を惑わし魅了する、海界の蠱惑な魔物のことである。
その歌声の虜となったものは恍惚のまま、海の底へと引き込まれるという。
「セイレーンだって? うう……お前、絶対外国の血が強いな。他のみんなにも言われるだろう? 日本人は、そんなストレートにそういう告白は口にしないもんだぞ……」
聞いているこっちの方が恥ずかしくなる。
ユウは真っ赤になって、自分より年下だが、恐れを知らない濃いブルーの瞳を見た。
「それにセイレーンに心を奪われたら、死んでしまうんじゃなかったか?」
すると零は、いっそう強い光を瞳に点した。
「それこそ本望です。破滅しても死んでも、何がなんでも欲しいものは手に入れろというのがウチの家訓です」
「そんな……」
「本当です。オレの母方の先祖はバイキングです。船で初めて訪れた土地で見初めた美人を、次に湾へ着岸した時に連れ去って花嫁にしようとしたら、既に違う男に掠め取られていたって逸話があるんです。先祖は、それが心残りで死ぬまで後悔し続けたと――だから、惚れたなら相手が誰だろうと絶対に迷うなと、母から常々言われています」
それまでの正座の状態から姿勢を変え、片膝をつくと、零は恭しく言った。
「もう一度言います。あなたはオレのセイレーンだ。心を、魂を奪われました……愛しています」
そして彼は、右手を差し出した。
この手を取れば、それはOKの意味になる。
「……」
愛しくて、欲しくて堪らない。
「だから、オレと付き合ってください! お願いします!」
真っすぐで、ストレートな告白だ。
何のひねりもない。
恋愛の駆け引きめいたこと一つもない、実にピュアな告白だ。
だから余計に……ユウの心に、響いた。
「……オレはアラサーなんだぞ?」
「そんなの知ってます!」
「お前はまだ十六の高校生じゃないか。それが、こんなおっさんつかまえて言うセリフじゃないぞ」
「おっさんなんてとんでもない! それに歳なんか関係ありません。あなたは世界一綺麗です! 好きです、愛しています! 一目惚れしました!」
ありったけの情熱を込めて、零は求婚するように告白する。
毒気を抜かれて、ユウは妙に気の抜けた声をもらした。
「……一目惚れって……いったい、いつから?」
「ゴーパラで、初共演した時からです。元々オレはあなたのファンでしたが、今はそれ以上です。ワンフレーズだけ歌うあなたの美しさに、一目で完全に虜になりました。あなたは、オレのセイレーンです」
セイレーンとは、美しい歌声で船人を惑わし魅了する、海界の蠱惑な魔物のことである。
その歌声の虜となったものは恍惚のまま、海の底へと引き込まれるという。
「セイレーンだって? うう……お前、絶対外国の血が強いな。他のみんなにも言われるだろう? 日本人は、そんなストレートにそういう告白は口にしないもんだぞ……」
聞いているこっちの方が恥ずかしくなる。
ユウは真っ赤になって、自分より年下だが、恐れを知らない濃いブルーの瞳を見た。
「それにセイレーンに心を奪われたら、死んでしまうんじゃなかったか?」
すると零は、いっそう強い光を瞳に点した。
「それこそ本望です。破滅しても死んでも、何がなんでも欲しいものは手に入れろというのがウチの家訓です」
「そんな……」
「本当です。オレの母方の先祖はバイキングです。船で初めて訪れた土地で見初めた美人を、次に湾へ着岸した時に連れ去って花嫁にしようとしたら、既に違う男に掠め取られていたって逸話があるんです。先祖は、それが心残りで死ぬまで後悔し続けたと――だから、惚れたなら相手が誰だろうと絶対に迷うなと、母から常々言われています」
それまでの正座の状態から姿勢を変え、片膝をつくと、零は恭しく言った。
「もう一度言います。あなたはオレのセイレーンだ。心を、魂を奪われました……愛しています」
そして彼は、右手を差し出した。
この手を取れば、それはOKの意味になる。
「……」
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