ヒネクレモノ

亜衣藍

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最終章

3

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 零は、そんな事を真剣に考えていたのだが――実際はもっと、とんでもない真実だった。

「え? ……お父さん……!?」

 この衝撃の告白に、あのセリフがピタリと合致した。

『オレは、そんな鬼畜ド変態クソ野郎じゃな――い!』

 そう言い切った理由は、これの事かっ!
 絶句する零に、ユウはあっさりと肯定した。

「ああ。お前はもう気づいたようだから言うけど、オレたちは正真正銘の親子なんだ。でも、あの人はヤクザから足を洗ったばかりでまだ周辺が落ち着かないから、この事は当分の間秘密にしておいた方が良いだろうって話でさ」

「ど、どうしてですか?」

「敵対勢力に御堂聖の血縁だってバレたら、人質にとられる危険もあるんだってさ。そうなったら、無条件完全降伏するしかないって。なんせ、聖さんは息子のオレにベタ甘だからな~」

 四十三歳の親父が、三十歳になった息子に対して、愛していると堂々と臆面もなく真顔で言うのだ。 

 嬉しい反面、ユウはやはり、非常に照れくさい。
 この歳になっても、まだ、そういう事を言う親がいるのかと思うと。

 はっきり言って、とても困る……。

 溜め息をつき、ユウは再び口を開いた。

「――で、その敵対勢力の件を考えるなら、数ある愛人の一人ってポジションにした方がまだ安全だろうと、聖さんは考えたらしい。しばらくはその設定を押し通したままでも、芸能活動には支障はないだろうと……でも、やっぱり、そんなに上手く行くわけがないな」

 チラリと零を見遣り、ユウはまた溜め息をつく。

「何だか変な野郎にはインネンを付けられるわ、スタッフからは白い目で見られるわ……結果は御覧の通り、散々だ」

「うっ……スミマセン……」

「とにかく、あの人はオレを甘やかし過ぎる。昔、オレを鬼ババやジジイから守り切れなかった負い目が原因っていうのもあるらしいが――」
「負い目?」
「ま、色々な」

 他人にベラベラ喋るような内容じゃないと思い直し、ユウは話を切り上げる。

「ジュピタープロでは、聖さんの偏愛が原因で、周りとの関係が悪化してしまった。最後のダメ押しは、オレだったけどな」

 歌謡祭のボイコットは、ユウなりのケジメだった。
 これで、もう御堂社長も愛想をつかすよ、と。

――――愛人は、終了だと。

「ジュピタープロからは無期限休業を言い渡された。早い話、クビだよ。このままオレは、フリーに転向するつもりだ。とりえず事務所とは縁が切れるわけだから、もうバカげた愛人ごっこは終わりだな。だけど、お前も分かってるな? オレと聖さんが親子だってのは、これからも秘密だぞ」
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