92 / 101
16
16-4
しおりを挟む
密かに金も送ったが畠山からは全て返されてしまい、聖は無力感に打ちのめされた。
だが、祖父母に引き取られたユウが、中学を卒業したら進学せずに歌手を目指して上京するつもりらしいと耳にした時、聖は決心した。
これまで何もしてやれなかった分、今度こそたっぷりと愛情を与えようと。
世界一、幸せにしてやろうと。
身辺を整理して少しづつヤクザ稼業から身を引き、芸能事務所の社長に収まったのも元々はこのためだ。
裕子は、生徒に対し分け隔てなく接し、子供好きで思いやりのある優しい女であったのに、聖と出逢ってしまった為に、その人生は大きく捻じ曲がってしまった。
真反対の女に変貌してしまった裕子は『アゲハ』になり、何の罪もないハズの我が子はゴミと汚物にまみれて危うく死にかけるところだった。
その罪を、今度こそ清算出来ると思った。
しかし意に反し、ユウは聖の用意した事務所ではなく、路上でスカウトされた七虹プロと契約してしまった。
やはり、聖を恨んでいるのか?
それとも、幾ら老舗とはいえ地回り上がりの芸能事務所では嫌だったのか?
年甲斐もなく意気消沈していたら、ユウは朗らかに笑って答えた。
「そんな理由じゃ無いよ。男なら、自分の力でどこまでやれるか勝負したいじゃないか。最初からあなたに頼ったら、インチキになってしまう」
それからすぐに、ユウはミリオン歌手となり華々しく芸能界で輝いた。
やがて十五年の時が経ち、ユウは三十歳になった。聖は四十三歳になっていた。
芸能界には、毎日昇ってくる太陽のように、華やかなアイドルたちが次々と台頭する。
反対にユウは、ゆっくりと沈んでいく太陽のように、徐々に輝きを失っていった。
そのユウを、ただ一途に聖は見守っていた。
(ジュピタープロも大きくなった事だし、ようやく今度こそ、オレでも役に立てるチャンスが来たと思ったんだが……)
その手を振り払い、愛しい我が子は、自分の力で再度飛ぼうとしている。
親としたら、懐に抱え込んでずっと護ってやりたいと思うが……本当は背中を押してやった方が正解なのだろう。
――――さぁ、飛べ! と……。
「オレもいい加減に、子離れする潮時なのか……まったく、親ってのは、切ねぇもんだなぁ……」
聖はそう言うと、静かに寂しそうに微笑んでいた。
だが、祖父母に引き取られたユウが、中学を卒業したら進学せずに歌手を目指して上京するつもりらしいと耳にした時、聖は決心した。
これまで何もしてやれなかった分、今度こそたっぷりと愛情を与えようと。
世界一、幸せにしてやろうと。
身辺を整理して少しづつヤクザ稼業から身を引き、芸能事務所の社長に収まったのも元々はこのためだ。
裕子は、生徒に対し分け隔てなく接し、子供好きで思いやりのある優しい女であったのに、聖と出逢ってしまった為に、その人生は大きく捻じ曲がってしまった。
真反対の女に変貌してしまった裕子は『アゲハ』になり、何の罪もないハズの我が子はゴミと汚物にまみれて危うく死にかけるところだった。
その罪を、今度こそ清算出来ると思った。
しかし意に反し、ユウは聖の用意した事務所ではなく、路上でスカウトされた七虹プロと契約してしまった。
やはり、聖を恨んでいるのか?
それとも、幾ら老舗とはいえ地回り上がりの芸能事務所では嫌だったのか?
年甲斐もなく意気消沈していたら、ユウは朗らかに笑って答えた。
「そんな理由じゃ無いよ。男なら、自分の力でどこまでやれるか勝負したいじゃないか。最初からあなたに頼ったら、インチキになってしまう」
それからすぐに、ユウはミリオン歌手となり華々しく芸能界で輝いた。
やがて十五年の時が経ち、ユウは三十歳になった。聖は四十三歳になっていた。
芸能界には、毎日昇ってくる太陽のように、華やかなアイドルたちが次々と台頭する。
反対にユウは、ゆっくりと沈んでいく太陽のように、徐々に輝きを失っていった。
そのユウを、ただ一途に聖は見守っていた。
(ジュピタープロも大きくなった事だし、ようやく今度こそ、オレでも役に立てるチャンスが来たと思ったんだが……)
その手を振り払い、愛しい我が子は、自分の力で再度飛ぼうとしている。
親としたら、懐に抱え込んでずっと護ってやりたいと思うが……本当は背中を押してやった方が正解なのだろう。
――――さぁ、飛べ! と……。
「オレもいい加減に、子離れする潮時なのか……まったく、親ってのは、切ねぇもんだなぁ……」
聖はそう言うと、静かに寂しそうに微笑んでいた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

【完結】薄倖文官は嘘をつく
七咲陸
BL
コリン=イェルリンは恋人のシルヴァ=コールフィールドの管理癖にいい加減辟易としていた。
そんなコリンはついに辺境から王都へ逃げ出す決意をするのだが…
□薄幸文官、浮薄文官の続編です。本編と言うよりはおまけ程度だと思ってください。
□時系列的には浮薄の番外編コリン&シルヴァの後くらいです。エメはまだ結婚していません。
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182
ナラズモノ
亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。
(※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください)
芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。
そんな彼には、密かな夢があった――――。
【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる