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この惨状には、それまで冷酷だと言われていた聖もさすがに言葉を失った。
しかも、まだ四歳くらいかと思っていたその子供は、実は小学校に入学しているハズの年齢だったのだ。
(こんなに小さな子が、もう七つだと!?)
さすがに同情を禁じ得ない。
聖は子供を見つけた手前もあり、時間が空けば頻繁に病院へ顔を出すようになった。
そして子供も、次第に聖へ懐くようになった
(可愛い子だな……こんな子を見捨てるなんて親が、この世にいる方が不思議だぜ)
そう、聖は思った。
徐々に回復し、少しずつ話せるようになった子供は、ある日、自分の名前を聖に教えてくれた。
ぼくのなまえは、はたけやまゆう。おかあさんは、はたけやまゆうこっていうの。おとうさんはね、みどうひじりくんっていうんだって。
それを聞いた時、聖は、自分の大罪に瞠目した。
なんとこの哀れな子供は、裕子と自分の間に生まれた息子だったのだ!
その後、すぐに聖はユウを引き取ろうとしたが、七年前の当時、未成年で十二歳の少年だった聖は、父親として戸籍に入っていなかった。
教師が教え子に手を出した形になるのだから、それ自体が犯罪ものだ。
当時、裕子の親族が必死になって、その事実をもみ消そうと躍起になったのを覚えている。
だが、まぎれもなくユウは聖の息子だ。
大切な、自分の子供なのだ!
聖は実子として引き取るべくDNA鑑定を訴えたが、この東京の騒動を聞きつけて田舎から駆けつけた畠山の家は、頑としてそれを拒み通した。
間の悪い事にこの一件は、子供の危機を救ったヤクザのお手柄と週刊誌にスクープされ、先に報道に乗ってしまったのだ。
過去の恥を穿り返されては堪らぬと、外聞を気にした畠山の家により、ユウは強引に田舎の祖父母へ引き取られてしまった。
聖は必死になって阻止しようとしたが、その当時、正真正銘の極道者だったのがマイナスだった。ヤクザに幼子を任せるなど非常識な事だと断罪され、どう訴えても要望は通らなかったのである。
だが東北の田舎で暮らす事になったユウが、幸せだったとは決して言えないだろう。
聖は、折々に人を遣って様子を見に行かせたが、ユウは畠山の家ではずっと虐げられていたようだ。
母親からは見捨てられ、親族や祖父母からは鬼子と冷たい目で見られ、町のものからは意味もなく貶され罵倒される。
ユウが孤独で寂しい暮らしをしていると聞き及ぶたび、聖の心は引き裂かれそうな気持ちになった。
しかも、まだ四歳くらいかと思っていたその子供は、実は小学校に入学しているハズの年齢だったのだ。
(こんなに小さな子が、もう七つだと!?)
さすがに同情を禁じ得ない。
聖は子供を見つけた手前もあり、時間が空けば頻繁に病院へ顔を出すようになった。
そして子供も、次第に聖へ懐くようになった
(可愛い子だな……こんな子を見捨てるなんて親が、この世にいる方が不思議だぜ)
そう、聖は思った。
徐々に回復し、少しずつ話せるようになった子供は、ある日、自分の名前を聖に教えてくれた。
ぼくのなまえは、はたけやまゆう。おかあさんは、はたけやまゆうこっていうの。おとうさんはね、みどうひじりくんっていうんだって。
それを聞いた時、聖は、自分の大罪に瞠目した。
なんとこの哀れな子供は、裕子と自分の間に生まれた息子だったのだ!
その後、すぐに聖はユウを引き取ろうとしたが、七年前の当時、未成年で十二歳の少年だった聖は、父親として戸籍に入っていなかった。
教師が教え子に手を出した形になるのだから、それ自体が犯罪ものだ。
当時、裕子の親族が必死になって、その事実をもみ消そうと躍起になったのを覚えている。
だが、まぎれもなくユウは聖の息子だ。
大切な、自分の子供なのだ!
聖は実子として引き取るべくDNA鑑定を訴えたが、この東京の騒動を聞きつけて田舎から駆けつけた畠山の家は、頑としてそれを拒み通した。
間の悪い事にこの一件は、子供の危機を救ったヤクザのお手柄と週刊誌にスクープされ、先に報道に乗ってしまったのだ。
過去の恥を穿り返されては堪らぬと、外聞を気にした畠山の家により、ユウは強引に田舎の祖父母へ引き取られてしまった。
聖は必死になって阻止しようとしたが、その当時、正真正銘の極道者だったのがマイナスだった。ヤクザに幼子を任せるなど非常識な事だと断罪され、どう訴えても要望は通らなかったのである。
だが東北の田舎で暮らす事になったユウが、幸せだったとは決して言えないだろう。
聖は、折々に人を遣って様子を見に行かせたが、ユウは畠山の家ではずっと虐げられていたようだ。
母親からは見捨てられ、親族や祖父母からは鬼子と冷たい目で見られ、町のものからは意味もなく貶され罵倒される。
ユウが孤独で寂しい暮らしをしていると聞き及ぶたび、聖の心は引き裂かれそうな気持ちになった。
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