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ギュッと拳を握り、聖は己に対する怒りで震えながら言葉を紡ぐ。
「本来なら、あいつはオレが全身全霊で護ってやらなきゃあいけなかったのに……それが、あんな地獄のようなっ……まだ、その過去の罪を償っていません」
「そう、あの子が喋ったのか?」
「……」
「違うだろう。おめぇが勝手に思っているだけだ」
そう言うと、また茶を啜り、天黄正弘は眼前の見事な庭園を眺めた。
「おめぇは、本当に、クソ真面目だなぁ……」
◇
待ちに待った歌謡祭。
【ミュージック・ヒット・ザ・ジャックポット】
芸能界が、その祭典に沸いた。
今をときめくアーティスト達が、煌びやかに華を競う。
ある者は激しくダンスパフォーマンスで喝采を浴び、ある者は歌唱力にモノを言わせ、情熱的に歌い上げた。
この様子はテレビとネット中継で世界へライブ配信され、画面に熱い視線を注いでいた観衆からは、自然と拍手と歓声が湧き起こった。
アクセスが当初の予測よりも上回り、サーバーがダウンするのではと、運営側が青ざめるほどの盛況ぶりだった。
次々と、アーティストたちが華やかな舞台に立っては、鮮やかに去っていく。
零、美央、明のTriangleの出番は、終盤に入ってからだった。
トリに近ければ近いほど、世間の注目度が高い証拠でもある。
「みんなー! オレたちのデビュー曲、覚えてるかいっ!? 一緒に歌おうよ!」
「行くぜ、〈try-try-Guys-try!〉!」
「Come on!!」
眩しいライトに目がくらみそうになりながらも、三人は明るく笑い、踊り、渾身のパフォーマンスをやり遂げた。
揃いの衣装も、この日のためにトップ・デザイナーに依頼して用意した特注品だ。
思い出深いデビュー曲を、三人の綺麗なハーモニーで歌い上げると、会場に詰めたファンからも、ネットの観衆からも、熱狂的な歓声があがるのを直に感じた。
「みんな、ありがとう!」
高揚した気分になりながら、三人は深々と観衆へ頭を下げ、満面の笑顔で両手を振って、舞台を次のアーティストへ譲った。
しかし、袖に引っ込んだ彼らはすぐに真顔になると、互いの顔を見合わせる。
舞台裏では、先程から怒号が飛び交っていたのだ。
「まだ畠山ユウは現れないのか!?」
「どうやら、やはり畠山はドタキャンしたようです!」
バタバタと走り回り、焦るスタッフ達。
「本来なら、あいつはオレが全身全霊で護ってやらなきゃあいけなかったのに……それが、あんな地獄のようなっ……まだ、その過去の罪を償っていません」
「そう、あの子が喋ったのか?」
「……」
「違うだろう。おめぇが勝手に思っているだけだ」
そう言うと、また茶を啜り、天黄正弘は眼前の見事な庭園を眺めた。
「おめぇは、本当に、クソ真面目だなぁ……」
◇
待ちに待った歌謡祭。
【ミュージック・ヒット・ザ・ジャックポット】
芸能界が、その祭典に沸いた。
今をときめくアーティスト達が、煌びやかに華を競う。
ある者は激しくダンスパフォーマンスで喝采を浴び、ある者は歌唱力にモノを言わせ、情熱的に歌い上げた。
この様子はテレビとネット中継で世界へライブ配信され、画面に熱い視線を注いでいた観衆からは、自然と拍手と歓声が湧き起こった。
アクセスが当初の予測よりも上回り、サーバーがダウンするのではと、運営側が青ざめるほどの盛況ぶりだった。
次々と、アーティストたちが華やかな舞台に立っては、鮮やかに去っていく。
零、美央、明のTriangleの出番は、終盤に入ってからだった。
トリに近ければ近いほど、世間の注目度が高い証拠でもある。
「みんなー! オレたちのデビュー曲、覚えてるかいっ!? 一緒に歌おうよ!」
「行くぜ、〈try-try-Guys-try!〉!」
「Come on!!」
眩しいライトに目がくらみそうになりながらも、三人は明るく笑い、踊り、渾身のパフォーマンスをやり遂げた。
揃いの衣装も、この日のためにトップ・デザイナーに依頼して用意した特注品だ。
思い出深いデビュー曲を、三人の綺麗なハーモニーで歌い上げると、会場に詰めたファンからも、ネットの観衆からも、熱狂的な歓声があがるのを直に感じた。
「みんな、ありがとう!」
高揚した気分になりながら、三人は深々と観衆へ頭を下げ、満面の笑顔で両手を振って、舞台を次のアーティストへ譲った。
しかし、袖に引っ込んだ彼らはすぐに真顔になると、互いの顔を見合わせる。
舞台裏では、先程から怒号が飛び交っていたのだ。
「まだ畠山ユウは現れないのか!?」
「どうやら、やはり畠山はドタキャンしたようです!」
バタバタと走り回り、焦るスタッフ達。
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