ヒネクレモノ

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
85 / 101
15

15-3

しおりを挟む
 ギュッと拳を握り、聖は己に対する怒りで震えながら言葉を紡ぐ。

「本来なら、あいつはオレが全身全霊で護ってやらなきゃあいけなかったのに……それが、あんな地獄のようなっ……まだ、その過去の罪を償っていません」

「そう、あの子が喋ったのか?」
「……」
「違うだろう。おめぇが勝手に思っているだけだ」

 そう言うと、また茶を啜り、天黄正弘は眼前の見事な庭園を眺めた。

「おめぇは、本当に、クソ真面目だなぁ……」

   ◇

 待ちに待った歌謡祭。

【ミュージック・ヒット・ザ・ジャックポット】

 芸能界が、その祭典に沸いた。
 今をときめくアーティスト達が、煌びやかに華を競う。
 ある者は激しくダンスパフォーマンスで喝采を浴び、ある者は歌唱力にモノを言わせ、情熱的に歌い上げた。
 この様子はテレビとネット中継で世界へライブ配信され、画面に熱い視線を注いでいた観衆からは、自然と拍手と歓声が湧き起こった。
 アクセスが当初の予測よりも上回り、サーバーがダウンするのではと、運営側が青ざめるほどの盛況ぶりだった。
 次々と、アーティストたちが華やかな舞台に立っては、鮮やかに去っていく。

 零、美央、明のTriangleの出番は、終盤に入ってからだった。
 トリに近ければ近いほど、世間の注目度が高い証拠でもある。

「みんなー! オレたちのデビュー曲、覚えてるかいっ!? 一緒に歌おうよ!」
「行くぜ、〈try-try-Guys-try!〉!」
「Come on!!」

 眩しいライトに目がくらみそうになりながらも、三人は明るく笑い、踊り、渾身のパフォーマンスをやり遂げた。
 揃いの衣装も、この日のためにトップ・デザイナーに依頼して用意した特注品だ。
 思い出深いデビュー曲を、三人の綺麗なハーモニーで歌い上げると、会場に詰めたファンからも、ネットの観衆からも、熱狂的な歓声があがるのを直に感じた。

「みんな、ありがとう!」

 高揚した気分になりながら、三人は深々と観衆へ頭を下げ、満面の笑顔で両手を振って、舞台を次のアーティストへ譲った。

 しかし、袖に引っ込んだ彼らはすぐに真顔になると、互いの顔を見合わせる。
 舞台裏では、先程から怒号が飛び交っていたのだ。

「まだ畠山ユウは現れないのか!?」
「どうやら、やはり畠山はドタキャンしたようです!」

 バタバタと走り回り、焦るスタッフ達。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナラズモノ

亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。 (※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください) 芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。 そんな彼には、密かな夢があった――――。 【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...