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しおりを挟む一昔前の歌謡祭なら、いくらでも裏から手を回して八百長するのが普通であった。
ショーレースを如何に席巻出来たかで、その芸能事務所がどれほど力を持っているのかがか知らしめられたものである。
審査員を懐柔したり、票を操作するのも当たり前の常套手段だった。
それは卑怯でもなんでもない、全ては力があるか無いかだけの話である。
清濁併せ呑むのが、芸能界の暗黙のルールであった。
だが、今は違う。
お為ごかしの利かないネットの世界が、テレビよりもはるかに盛況になりつつある。
【ミュージック・ヒット・ザ・ジャックポット】
この歌謡祭は、お偉い審査員が投票するのでも、CDセールスで順位を付けるのでもなく、純粋に一般のネット投票で決まる。
いずれにせよ、ジュピタープロは老舗芸能プロダクションとしての地力があったので、このところ音楽関連からは遠ざかっていたものの、出演枠は何とか確保できた。
そもそもジュピタープロの歴史は古く、戦前に興行師として起業した事から始まっている。そして興行師とは、その地区の地回りが行うことが多かった。
地回りとは、ようするに今でいうところの反社会的勢力に該当するだろう。
しかしこれは、特別珍しい事ではない。
むしろ、当時はそれが常識だったといってもいいだろう。
興行を催す場合、狭い区域にたくさんの観衆を集めるという構造上の特質から、暴力による妨害が入ると興行を続けることは非常に脆弱だという欠点があった。
その為、それを防ぐ意味もあり、その地域に力を持つ地回りが興行を手がけることが多かったのだ。
ジュピタープロとヤクザが、今も深い繋がりを保っている由縁である。
もちろんそんな事は、一般人はあずかり知らぬ話だが。
しかし、その昔ながらの構造も終わりを迎えようとしているようだ。
カネと力で業界を仕切っていられた時代は、遠い過去のものになった。
ジュピタープロはテレビ局に介入する力はあっても、ネットの向こうの聴衆を操る術など最早無い。
再びユウを、ジュピタープロの力だけでトップ・スターに押し上げるには――――もう、誰の目にも不可能だった。
◇
「ずいぶん、おめぇにしちゃあ迷走しているじゃねぇか」
本家に呼び出された御堂聖は、そう言葉をかけられた。
下座に控えて深々と平伏したまま、聖は次の言葉を待つ。
相手は、好々爺といった風情の品のいい老人であった。
老人は茶を啜ると、聖にも茶と菓子を勧める。
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