ヒネクレモノ

亜衣藍

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「すっごい地味だよね。プロダクション社長の愛人にしてはさ……」

 しかし時折、御堂自ら差し入れを持参してマンションへ足を運んでいるようだ。
 そして、泊まることもあるらしい。
 この親密加減からして、やはりただの事務所社長とタレントの関係ではないと思うが。

「……この張り込み、零の友人が協力してくれているらしいよ。探偵が本職なんだってさ。零は交友関係が広いね」

 美央が、呆れつつ関心した口ぶりで言う。
 その探偵をしている友人の報告で、今は大体の畠山ユウの行動パターンが分かっていた。

 ユウは朝から午後三時まではマンションに引きこもっているが、三時以降は食材の買い出しに徒歩で出かけるのが多い。または、六時頃夕食に出かけるか。そして、夜九時以降は全く外出しないようだ。
 車は以前持っていたようだが、維持費がかかるし、そもそも東京では車は無用だと見切りをつけ手放したそうだ。
 
 見栄を張りたがるのが芸能人の習性だろうに、実に、芸能人らしからぬ堅実な判断だ。
 ユウは、ハウスキーパーも雇っていない。
 本当に彼はたった一人で、孤高の城に長く立てこもっている状態のようだ。

(でも、そろそろのハズだ――)

 狙っているのは、午後の買い出しのタイミングだ。
 零自身も、人気グループTriangleのアイドルだ。
 そうそう自由になる時間が無い中、今日は貴重なオフ日だった。
 零はこの限られた自由時間を使って、今日こそは必ずユウに会おうと心に決めていた。
 美央と明は、少し離れた場所から、その鬼気迫る様子の零を観察している状況である。

 やがて、零の願望が天に通じたのか。
 マンションから、待ちにまったユウが現れた。

 ユウは、デイパックを背に、パーカーを羽織っただけの軽装だ。
 人目を避けるキャップもサングラスもせず、いたって普通の格好だった。

――――だが、やはり一般人とは違う。

 まだユウには、芸能人独特の華やかさが色濃く残っていた。
 その艶やかな凛とした美貌を見違えるわけがなく、零はパッと顔を上げる。

「ユウさん!」
「っ!?」

 零の呼びかけに振り向いたユウは驚愕の表情になり、慌ててマンションへ引き返そうとした。
 だが、零の方が早い。
 逃げようとするその手を掴み、逃亡を阻止する。

「待ってください!」
「は、離せ!」
「先日は、本当にすみませんでした!オレ、ちゃんと謝りたくて……何回も謝罪するチャンスを探したけど、なかなかキチンと会って話す機会がなくて……」
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