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せっかく聖が孤軍奮闘で、ここまで頑張ってきたのだ。
ユウがそれを無駄にするわけにはいかない。
(あの金髪のガキにも、その内しっかりと念を押さないと……)
嫌な顔を思い出し、ユウは不機嫌そうに唇を噛み締めた。
零は、拉致騒動の時に相当脅されただろうに、あまり本人は堪えなかったのか、輪をかけたようにユウの周囲へ事有る毎に出没していた。
ジュピタープロダクション全面バックアップのお陰で、ユウの仕事が増えたのが却って拙かった。
テレビ局へ頻繁に出向くようになったユウの名前を楽屋に見付けては、零は無邪気に楽屋へと顔を出すようになっていたのだ。
まるで、ユウに対して行使した暴力を忘れたかのように、明るく元気に笑いながら挨拶をしてくる零だ。
牽制球のつもりで「オレは聖さんの愛人だ。今後もアイドルでいたかったら二度とオレに近づくな、次は本当にケガをさせるぞ」という、事前に考えていたあの究極の脅し文句も言ってみたが。
意に反し、零には全く通じないようで「はいはい、嘘だって分かってますよ」と軽く受け流されてしまった。
いとも容易く嘘だと看破されたことに居たたまれず、最近ではユウの方が零を避けて逃げ回っている状況だ。
とにかく腹立たしいので、視線も合わせずに徹底的に無視をしていたのだが、どうも今度はその態度が拙かったらしい。
業界内で、妙な噂が立ちつつあるのだ。
事務所も違うのに、Triangleの零は、ひと回り以上歳の離れた畠山ユウを慕って懐いているようだ。
しかし畠山ユウの方は始終冷たい態度で、可哀想な事に相手にされていないらしい。
落胆する零の様子は哀れで、とても見ていられない……と、まるでユウの方が悪者のように言われ始めているのだ。
極力、その事は聖の耳に入らないように気を付けていたので、諸悪の根源である零の身は無事に済んでいるが。
この噂がまた聖に知られてしまったらと考えると、気が気ではない。
マネージャーの真壁と協力して話が広がるのを防いでいるが……しかしこのままでは、それも時間の問題だろう。
じつに、頭の痛い問題だ。
真壁としても、他社のタレントとモメることなど全くジュピタープロの利益にならないので、この一件に関しては可能な限りユウと協力しているが。
如何せん零本人が、周囲の目など気にしない様子で次々と行動を起こすので、無視を押し通すのも限界に近い。
「あの金髪も何を考えているんだか……御堂社長に恫喝されたんだろう? 芸能界から消えるかもしれないって震え上がった筈だろうに。それなのに、怖くないのか?」
ユウがそれを無駄にするわけにはいかない。
(あの金髪のガキにも、その内しっかりと念を押さないと……)
嫌な顔を思い出し、ユウは不機嫌そうに唇を噛み締めた。
零は、拉致騒動の時に相当脅されただろうに、あまり本人は堪えなかったのか、輪をかけたようにユウの周囲へ事有る毎に出没していた。
ジュピタープロダクション全面バックアップのお陰で、ユウの仕事が増えたのが却って拙かった。
テレビ局へ頻繁に出向くようになったユウの名前を楽屋に見付けては、零は無邪気に楽屋へと顔を出すようになっていたのだ。
まるで、ユウに対して行使した暴力を忘れたかのように、明るく元気に笑いながら挨拶をしてくる零だ。
牽制球のつもりで「オレは聖さんの愛人だ。今後もアイドルでいたかったら二度とオレに近づくな、次は本当にケガをさせるぞ」という、事前に考えていたあの究極の脅し文句も言ってみたが。
意に反し、零には全く通じないようで「はいはい、嘘だって分かってますよ」と軽く受け流されてしまった。
いとも容易く嘘だと看破されたことに居たたまれず、最近ではユウの方が零を避けて逃げ回っている状況だ。
とにかく腹立たしいので、視線も合わせずに徹底的に無視をしていたのだが、どうも今度はその態度が拙かったらしい。
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しかし畠山ユウの方は始終冷たい態度で、可哀想な事に相手にされていないらしい。
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極力、その事は聖の耳に入らないように気を付けていたので、諸悪の根源である零の身は無事に済んでいるが。
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